視点
3D映画ブームの光と陰
2009/01/05 16:41
週刊BCN 2009年01月05日vol.1266掲載
平面画面から立体画像を見たいというのは人類の夢であり、これまで何回となく3Dブームがあったが、そのつど失敗している。しかし今、3D映像がブームとなる予感だ。2005年、ディズニーの3D映画「Chicken Little(チキン・リトル)」が大ヒットした。このことが、業界を3Dに向かわせる大きなきっかけとなっている。
従来は、偏光メガネによる疲れやフリッカー(チラツキ)が多いなどの理由で、敬遠されたものだ。だが、近年はREAL D方式という全く新しいメソッドが開発され、一台のDLPプロジェクターによる投射が可能となり、疲労感や不自然さという阻害要因を追放したために、俄然、注目されたのである。デジタルシネマの範疇においては、2Dのシアターと3Dのシアターでは売り上げは3倍も違うというから、ハリウッドは目の色を変えている。
しかし、視覚心理からはまだまだ改良の余地がある作品も存在する。ひとつが「書き割り」効果。奥行きは感じられるが、人物が重なる画面ではふくらみのある立体ではなく平面的な図が重なったような不自然な感じを受ける。特に実写の3D映像で感じる。少しでも実際の映像と差があると、もの凄く違和感を感じてしまう。
ピントのずれも気になる。人間の視覚は立体的にピント調節しているのだが、3Dの映像の場合、人間の目は物理的にスクリーン部にピントを合わせている。望遠レンズを使って被写界深度を浅くし、手前の人物にフォーカスをあてて背景をぼかすというシーンでは人間の視覚としてはスクリーンにフォーカスが合っているにもかかわらず、背景がぼけてみえる。ぼけた映像にフォーカスがあたっているのが、非常に気持ち悪い。
人間の感覚に沿って注意深く資金と時間をかけて作ったものは、かなりよい結果を残す。だが、一発勝負で撮った映像は優れた3D映像にはなりにくい。今後、ソフト作りをさらに研究する必要があるだろう。そして、こんな問題を解決しながら、3D映像は進展していくことだろう。
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