視点
ゲームソフトに見る著作権法改正の必要性
2008/12/15 16:41
週刊BCN 2008年12月15日vol.1264掲載
一方の日本はどうか。米国の覇権に対抗できる分野があるとすれば、コンテンツ産業である。特にゲーム産業は、任天堂とソニー・コンピュータエンタテインメントがプラットフォームまで押さえている。ところが、このゲーム産業の足下で、違法ソフトによる重大な問題が発生している現実がある。
ゲームソフトメーカーやゲーム機器メーカーは、違法ソフトが使われないよう「技術的制限手段」を講じているが、これを回避するマジコンと呼ばれる装置がユーザー間で大規模に広まっている。一方、NintendoDS用のゲームソフトがWinny上でどれだけ違法に流通しているのか今年8月に調査したところ、ある特定日の24時間だけでも約186万本と推定され、国内の全タイトルが入手できるという惨憺たる状況にあった。調査結果は、Winnyで入手したソフトをマジコンを使って利用する関係が無視できない規模になっていることを裏付けた。
任天堂とゲームソフトメーカー各社は、マジコンの販売が不正競争防止法違反(技術的制限手段の回避装置等の提供)にあたるとして訴訟を提起しているが、技術的制限手段の回避装置等の提供行為には刑事罰の適用はない。少なくとも、提供行為の予防・抑止のためには刑事罰が必要ではないだろうか。また、マジコンによる「本当の被害」は違法ソフトのまん延という著作権侵害であることを鑑みると、著作権法30条(私的使用目的での複製)を改正し、著作権侵害行為によって提供される著作物を、事情を知って(すなわち違法にアップロードされていることを知って)ダウンロードする行為も抑止される必要もあるだろう。
権利者にとって重要なことは、実効性ある侵害対策を担保し権利の的確な保護を実現するため、法制度を整備することだ。違法ソフトの流通実態を看過してデジタルコンテンツの流通促進ばかりを議論する国は、政府が標榜する「知的財産立国」とは到底呼べるものではない。
米国は「チェンジ」を唱えた人物がリーダーに就き、強みを一層強化しようとしている。マンガ好きな人物がリーダーのこの国でも、コンテンツ産業を強化すべく議論を重ねてもらいたい。
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