次世代Key Projectの曙光

<次世代Key Projectの曙光>80.島津ビジネスシステムズ(下)

2008/11/17 20:42

週刊BCN 2008年11月17日vol.1260掲載

漫画駆使して分かりやすく伝える

 1997年、島津製作所の社内ベンチャー制度を利用して、気象関連事業を立ち上げた。事業は正式承認ではなかったが、なんとか認められた。奥山哲史氏は島津製作所の情報システム部に籍を置き、一人で2年間ほど事業立ち上げに携わった。その後、99年に情報システム部が分社化され、島津ビジネスシステムズとしてスタートする際に、気象情報事業を本格的にスタートさせた。

 最初は建設業に向けて気象情報を配信し、ノウハウを蓄積した。その後、消費者向けにサービスを拡充し、J-PHONE(現ソフトバンクモバイル)の関西エリア向けに公式コンテンツとして「J-天気ーず」を開始。これが全国展開するようになった。


 その後、auでも「わかる!天気」をスタート。特にこだわったのは、キャラクターを使ってビジュアル的に天気を伝えることだ。「J-天気ーずの時代は天気をシンボライズして、晴れの時は『晴れキャラ』を表示していた」(奥山氏)。さらなる展開として京都精華大学の漫画学科と産学共同でキャラクター作りも進めていった。セミプロとして活躍する大学院生とともにキャラクターを作成。漫画の表現を通して楽しめて分かりやすいコンテンツを追求した。


 「一般的に女性は天気予報を見ないといわれている。20代前半の女性にも受け入れやすいものを目指した」(奥山氏)と話す。だが、実際ふたを開けてみると、30-40代のビジネスマンによく利用されているという。


 また、法人向けサービスも提供している。防災用気象監視システム「アメミル」は、建設業向けの事業の頃に、「ゲリラ豪雨の話なども聞いていた」ことから、10分ごとに観測し、遅くとも20-30分前には情報を配信。強雨監視のほか台風情報、地震情報なども同システムで見ることが可能だ。このシステムはある自治体の下水道局に採用された。


 職員参集システム「メルダス」は災害時の情報配信を簡単にし、携帯電話にメール、インターネット、通話などで配信が可能。消費者向け携帯ビジネスのノウハウが生かされている。


 今後は消費者向けの携帯電話サービスにも防災関連のノウハウを組み込む。そのために2007年、「お天気☆ジャパン」(ソフトバンクモバイル向け)開始とともに、システムを刷新した。最盛期には4万超あったユーザー数は今、2万5000に減っている。奥山氏は2年以内に最盛期のユーザー数に戻すことを目指すとともに、「今のノウハウを駆使しながら、新しい展開も考えている」と次の構想を語っている。(鍋島蓉子●取材/文)

  • 1