IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手
<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>66.「IT経営力大賞」シリーズ タナカ工業(下)
2008/10/27 16:40
週刊BCN 2008年10月27日vol.1257掲載
IT活用で環境の変化に適応
大正年間に左官業として創業したタナカ工業は今、3代目の社長が経営の舵をとる。先々代の時代は、タイル張りの風呂がまだ少なく、福井中の風呂にタイルを張って回った。この経験をベースに風呂場や台所など水回りのリフォーム、家庭用ボイラーの修理、住宅設備機器の卸へと事業を拡大してきた。風呂や台所で使うボイラーの故障は日常生活に差し支えが出るため、迅速な修理が求められる。補修用の部品を素早く揃え、すぐに顧客先へ出向く。これまで、先織久恒ITコーディネータ(ITC)のコンサルティングのもと、約8000件の顧客データベース(DB)を構築。これと並行して、部品の在庫管理や出張修理を本社から支援するシステムもつくった。開発は先織ITCが社長を務めるITコンサルティング会社・コスモタウンだ。
即日修理には部品の在庫が欠かせないが、在庫が増えすぎると資金繰りを圧迫する。在庫管理システムは、あらかじめ適正在庫の数値を入力しておき、担当者が朝、出社したときに欠品の恐れがある部品リストを自動的に表示。在庫量を適正に保ちながら欠品を起こさないようにした。
また、出張修理では、訪問先から次の訪問先へ本社から誘導することで無駄を省く。従来は修理が終わってから、いったん会社に戻り、次の修理先へ出向くケースが目立った。今は顧客から修理依頼があると本社側で顧客DBを参照。修理に必要な段取りを手配する。この情報を電子メールで現場担当者の携帯電話へ送信。通常の電話連絡と併せて運用することで、直接次の修理先へ出向ける仕組みを取り入れている。
今、水回りの事業環境は大きく変わろうとしている。灯油を使う給湯用ボイラーが多い福井だが、ここ4-5年はオール電化がじわり浸透。これに原油高が加わり、ソーラー式給湯など非灯油系機器の普及を後押しする。もともと灯油ボイラーの修理を得意としてきたタナカ工業だが、顧客ニーズの変化への対応は避けられない。補修部品の品揃え強化や顧客DBの拡充に力を入れる。田中明美専務は、「IT化していなかったら、給湯設備の多様化に対応できなかったかもしれない」と、胸をなでおろす。システム導入で環境変化への適応力がついたというわけだ。
タナカ工業は水回りの修理やリフォームに特化しており、家屋全般のリフォームは地域の工務店に任せる。工務店は住宅設備機器卸の顧客でもある。ITをフルに活用することで顧客の需要を掘り起こし、「工務店に仕事をより多く紹介できるよう努める」と、工務店との連携強化を通じてビジネス拡大を目指す。地域工務店とのネットワークを生かし、よりトータルなサービスを提供することで付加価値を高める考えだ。
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