IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>65.「IT経営力大賞」シリーズ タナカ工業(上)

2008/10/20 16:40

週刊BCN 2008年10月20日vol.1256掲載

顧客満足度を高めて受注拡大

 風呂場や台所などの水回りの修理やリフォーム、住宅設備機器卸を手がけるタナカ工業(福井県越前市、田中将嗣社長)は、約8000件の顧客情報をデータベース(DB)化した。文字情報だけでなく、出張修理で顧客先に出向いたときに設置状況の写真を撮り、顧客の基本情報とともにサーバーに保存。次回以降の修理やリフォームの基礎情報として役立てている。運用を始めてから約4年が経過。これまで蓄積してきた顧客DBの効果が本格的に現れてきた。

 タナカ工業とITコーディネータ(ITC)との出会いは、ITSSP(ITソリューションスクエアプロジェクト)活動の経営者セミナーだった。同プロジェクトは、経済産業省が中心となって中小企業のIT活用型経営を推進するもので、現在のIT経営応援隊活動の前身だ。タナカ工業は、2003年8月から7か月間、「顧客満足度を上げて受注を増やす」(田中明美専務)ことを目標に、地元越前市で活躍する先織久恒ITCのコンサルティングを受けることにした。

 コンサルティングでは、顧客情報の有効活用を検証するため、過去に給湯用ボイラー修理依頼のあった顧客向けの無料「水回り点検サービス」を実施。不良箇所の修理を提案したところ、同期間に11件の修理やリフォームを受注し、受注高は2700万円に達した。「有効性が確認できた」(先織ITC)とし、04年から顧客DBの本番運用をスタートさせた。

 DBは、顧客の氏名や住所などの基本情報とともに、設置状況をデジカメで撮った写真も保存している。これにより、次回、同じ箇所で問題が起きたときに、顧客先まで出向かなくても交換部品の特定が可能になる。1度修理すれば、そうそう壊れるものではなく、修理に関してはなかなか効果が見えてこない側面があった。だが、ここへきて過去に修理経験がある顧客への対応で“写真つきDB”の活用頻度が上昇。DBに基づく迅速な修理で顧客満足度を大幅に高めている。

 水回りでよく傷むのは給湯用のボイラーだ。灯油を備蓄するタンクも備え付ける必要があることから東京など大都市圏の家庭ではあまり見かけないが、都市ガスよりも割安なことから福井県では根強い人気がある。ボイラー修理はタナカ工業の得意分野の一つでもある。

 修理依頼が入ると、すぐに顧客DBを調べ、修理記録や写真からボイラーの型番を確認する。修理担当者はおおよその当たりをつけてから、在庫部品を手に客先へ向かう。最初の訪問で修理が完了すれば顧客満足度が高まり、次の受注に結びつけやすい。信頼を勝ち得たところで古くなった風呂場や台所のリフォームを提案することで「受注に至る確率が大幅に高まった」(田中専務)と手応えを感じている。
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