IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手
<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>64.「IT経営力大賞」シリーズ 中京陸運(下)
2008/10/13 16:40
週刊BCN 2008年10月13日vol.1255掲載
リアルタイムで車両の位置を確認
中京陸運は、2006年秋から運行管理システムの大幅刷新計画をスタートさせた。従来は、顧客の事業所へ個別に配送する約20人の小規模な部門で、先行試験的に採り入れていただけのシステムだった。だが今回の刷新プロジェクトでは、全社約520人のすべての部門に適用する大型の全社プロジェクトである。物流サービス会社にとって決められた時間通りに貨物を届ける定時配送は、安全運行の次に重大な関心事。しかし、道路渋滞、事故による通行止め、悪天候などさまざまな要因によって貨物輸送が遅延することがある。運行管理システムを導入する以前は、道路渋滞の情報に照らし合わせながら、事務所から現場乗務員に携帯電話や無線で遅延具合などを確認するしか方法がなかった。
高橋泰史・情報システム課長は、「渋滞や悪天候で、ただでさえストレスが溜まっている乗務員に電話や無線で逐一連絡をとるのは効率的とは言えない」とみている。さらに、運転中は携帯電話をとれないため、路肩やサービスエリアにいったん停車するなどしてさらに遅れる原因にもなりかねない。車両の位置を事務所で瞬時に把握できるようになれば、遅れが生じた時点で顧客企業に連絡でき、早め早めに運行スケジュールを組み直すことも可能になる。これがシステム導入後の大きなメリットだ。
システム開発に当たっては、大手通信キャリア系のSIerの協力を得た。常に移動する輸送車両をGPSや携帯電話の通信網を使って管理するシステムであるため、通信を本業とする通信キャリア系のSIerが適任だと判断したのだ。ただ、問題が起きなかったわけではない。通信に関して何ら支障はなかったのは当初の予想通りだったが、肝心の物流サービス業の業種ノウハウが不足することに起因する問題が発生したのだ。
例えば、一時期、双方が「理解した」と誤って認識したまま、システムを開発したこともあった。SIerは“貨物”をトレース(追跡)するのが運行管理システムだと認識していたが、物流サービスでは“乗務員”のトレースを通じて貨物を管理するのが常識。貨物の管理は法令で定められた乗務員の運行管理と表裏一体のものであり、人を管理することが即ち貨物の管理につながるという考え方だ。荷主(顧客)は貨物を軸に考えるが、物流サービスを提供する側は乗務員と貨物をセットで捉える。開発途中で誤解に気づき、危ういところで失敗プロジェクトにならずに済んだ。
運行管理システムは、2008年4月に本格稼働した。将来的には同システムによって集められた情報を詳細に分析し、より効率の高い運送計画の立案ができる仕組みづくりに取り組む。
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