次世代Key Projectの曙光

<次世代Key Projectの曙光>75.ブラザー工業(上)

2008/10/13 20:42

週刊BCN 2008年10月13日vol.1255掲載

音楽ノウハウを生かした第3の柱

 ブラザー工業(小池利和社長)は、9月11日よりランニング・ウォーキング向けの音楽配信サービス「EXERMUSIC(エクサミュージック)」を子会社のエクシング(吉田篤司社長)から提供開始した。エクシングと共に展開してきた業務用通信カラオケ「JOYSOUND(ジョイサウンド)」で培った技術などを応用したサービスだ。企画を思いついたのは昨年12月だった。

 「エクサミュージック」はユーザーの運動リズムにあわせて好きな音楽のリズムを自動的に変調し、MP3ファイルで配信する。一定間隔ごとにプロの指導音声データも挿入されている。ユーザーはMP3ファイルを携帯プレーヤーに入れ、音楽を聞きながら運動すれば、リズムを保ちながらプロの指導も耳から入ってくるというしかけ。運動の支援と指導の両立を狙ったアイデアだ。


 ブラザー工業のN&C事業推進部では、日ごろから、新事業の開発を進めている。「エクサミュージック」は西川浩・N&C事業推進部 チーム・マネジャーが、1人で事業化までこぎつけたサービスだ。カラオケ、着メロなど、多岐にわたる音楽コンテンツを配信している同社。「音楽資産を生かして、第3の柱を作ることはできないかと考えついた」(西川マネジャー)のが発端だ。


 既存の音楽資産を生かそうと考えた時、頭に浮かんだのがダンスのようなエクササイズでの音楽の使われ方だった。「運動リズムに音楽のリズムを同期させようと思った」という。しかし、運動といってもさまざまなものがある。そこで社会経済生産性本部が発行している「レジャー白書 2007」を参考にした。同白書によると、ジョギング・ランニングを楽しんでいる国内人口は2390万人。実に人口の5分の1がランニング運動を行っているのだ。他にもメタボリックシンドローム予防のための運動ブームの盛り上がりや、オリンピックイヤーにはスポーツ人口が増加するという統計もある。「マラソンやジョギングは費用がかからず、手軽に始められる運動。2000万人以上もランナーがいる、大きな市場だと思った」(西川マネジャー)。


 12月段階で、一度企画書を提出したものの、あまりに漠然とした企画であったため、相手にもされなかったと当時を振り返る。「音楽のノウハウはあるが、運動についてのノウハウがなく、専門家を探した」という西川マネジャー。知人の紹介により、プロ・ランニングコーチで有名な金哲彦氏と運命的な出会いをしたことが、サービス化への道を開いた。(鍋島蓉子●取材/文)

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