次世代Key Projectの曙光
<次世代Key Projectの曙光>66.丸紅インフォテック(下)
2008/08/04 20:42
週刊BCN 2008年08月04日vol.1246掲載
ファンが新たな企画広げる
丸紅インフォテック(天野貞夫社長)の尾崎匡晃・MD本部マーケティング部 部長補佐兼企画開発課長は、モノにこだわり、長く使えるモノを売りたいとの思いから「monoDO」という理念の商品シリーズを立ち上げた。前例のない取り組みゆえに、判断基準はなかったが、役員はチャレンジを賞賛してくれたという。昨年9月の段階では、社内のプレゼンと、商品のプロトタイプ製作が同時進行していた状態だった。メーカーとは昨年の春ごろから交渉を開始し、昨秋に第1弾を販売開始した。PC製品はなぜ金属製が多いのか、木製があってもいいだろうと考えて、製造元を調べて連絡したのは福井県で漆器の木地を作る工場だった。「漆器産業は伸び悩んでいる。工場でも打開の術を探していた」そうだ。
当初は、畑違いであることや、一つ一つを手作業で製作するために生産量の問題もあって、その工場は戸惑いを感じていたようだ。だが、良いものを世に送り出したいという思いは共通していた。工場とは月1回の割で連絡を取り、USBメモリやiPodケースなどの試作品の改良を行っていった。特にUSBメモリのキャップの改良には3か月を費やした。木は生きている。湿気や乾燥に左右され、木質によっては収縮や膨張が起こりやすい。この問題を解決するために施したのが、キャップの入り口部分を0.1ミリ小さく作ることだった。「0.1ミリなら、手の力で押し込むことができる」。この工夫で、滑らかなキャップの取り外しを実現させた。商品ブランド「Hacoa」の一連の製品は手仕事に頼る部分が多く、例えば1本のUSBメモリを作るのに3週間を要する。ほかにも、香港の会社とともに展開しているカードリーダーや、USBハブなどがある。デザインもさることながら、使う人が使いやすい工夫が、すべての商品に施されている。
今では、そのこだわりの製品を使っている人たちが、新たな展開のすそ野を広げているという。例えばミュージシャンの坂本龍一さんがユーザーであったことから、同氏が参画する森林再生プロジェクトで発生する杉の間伐材を有効利用したUSBメモリを開発することとなった。
今秋からは、さらにUSB周りの製品を拡充する予定。「いい商品を末永く作り続ける。定番品としてこつこつ作り続けていきたい」と意気込む。(鍋島蓉子●取材/文)
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