奔流!ネットビジネス 百戦錬磨の勝者にseedsを探る

<奔流!ネットビジネス 百戦錬磨の勝者にseedsを探る>動画投稿サイト編(第5回)

2008/06/30 16:04

週刊BCN 2008年06月30日vol.1241掲載

サイバーとリアルの狭間で

 動画投稿サイトは、コミュニティを形成しながら急速に成長している。アニメやゲームなど国内ネットユーザーの嗜好と重なる部分が大きいコンテンツは、そう遅くない時期に既存のテレビやラジオからネットへと発表の場が移る可能性も否定できない。ただ、ネットだけでは不十分、あるいはそぐわないコンテンツがあるのも確かだ。

 SNS型の動画投稿サイトのMySpace(マイスペース)は、サイバーとリアルの接点強化を進める。MySpaceは、音楽クリエーターや音楽ファンをメインターゲットとするサイトで、有望アーティストをレコード会社と共同で発掘したり、売り出したCDの販促をレコード販売店と協力して展開するなどのパートナーシップに力を入れる。

 ニコニコ動画ではアニメソングやゲームソングが人気だが、MySpaceは外資系だけあり、洋楽やJ-POPが人気。ユーザーコミュニティの雰囲気がまるで違う。今年5月には、EMIミュージック・ジャパンやエイベックス・エンタテインメント、HMVジャパンなど音楽業界の有力企業33社がMySpaceのオフィシャルパートナーに参加。音楽を志す若者がMySpace上で楽曲を発表し、視聴者からの支持が得られればレコード会社やプロダクションからオファーがかかるという仕組みを構築する。

 サイバーで得た人気をリアルなビジネスに結びつけることで、音楽クリエーターにより大きな夢をもってもらう。グローバル展開するMySpaceを使えば「世界へ進出する足がかりになる」(マイスペースの大蘿淳司社長)。国内のみならず、世界に向けて自分の音楽を発信することでチャンスが広がると話す。

 MySpaceのユーザー数は世界でおよそ1億1700万人で、うちアーティストやクリエーターの登録者数は800万組に達する。国内ユーザー数は非公表だが、アーティストやクリエーターでの登録数は5万5300組で、直近では毎月3000組余りが新たに登録する。視聴者の多さも驚きだが、音楽を創ったり歌ったりする制作者の参加数の多さは「世界トップクラス」と胸を張る。海外ではすでにMySpaceからブレイクしたユニットが多数出ている。

 国内でも今年に入ってMySpaceからメジャーデビューするユニットがある。男女の2人組ユニット「Sweet Vacation」は、タイ人と日本人の国際的な組み合わせ。ネット上で出会った2人はユニットを組み、今年夏にビクターエンタテインメントからデビューする予定だ。国境のないネットの特性とサイバーとリアルの接点を強めるMySpaceの特性をよく生かした事例だと評価される。(安藤章司●取材/文)

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