次世代Key Projectの曙光
<次世代Key Projectの曙光>57.リコー(上)
2008/06/02 20:42
週刊BCN 2008年06月02日vol.1237掲載
コンシューマサービスに参入
リコー(近藤史朗社長)は、5月、オンラインストレージサービス「quanp(クオンプ)」を立ち上げた。同社は2008年4月にスタートした「第16次中期経営計画(第16次中経)」で、「新しい成長領域を創出する」ことを掲げている。リコーは「quanp」によって、今まで踏み入れていなかったコンシューマ向けのサービスに本格参入する。第16次中経でリコーは「リコーバリュー」の提供にこだわっていくことを掲げた。「リコーバリュー」とは同社の特長を生かし、顧客に価値を提供するもので、「地球にやさしい」「人にやさしい」「知識創造を簡単に」の3項目をあげている。今回のquanpでは、そのなかでも「知識創造を簡単に」に主眼を置いている。
「これまでリコーではオフィスを対象とし、ハードウェア+サプライが主力事業だった」(生方秀直・MFP事業本部CPS-PTリーダー)。得意の法人向けはこれからも伸ばしつつ、新たな成長領域として掲げたのが、コンシューマ領域で事業を広げていくことだった。
プロジェクトを立ち上げる以前、予備チームの段階では、さまざまな製品やサービスが検討された。なかには、「法人向けプリンタを安くしてコンシューマに売る」といった案まであったそうだ。そんななか、注目を集めたのが「オンラインストレージサービス」だった。
アプリケーションはパッケージからウェブサービスへと移行している。また、ウェブサービスの伸長だけでなく、HDDの大容量化により、PCに莫大な情報を保管できるようになった。最近ではそうした情報を「守る」需要が出てきているほか、いつでもどこでも活用したいというニーズが生まれてきているという。「ウェブに情報を置いておくことで情報の活用度は高まると考えた」(生方氏)。
また、オンラインストレージサービスは、マイクロソフト、ヤフーなど大手企業も取り組んでいる。だが、生方氏は「百花繚乱に見えても、他社の既存サービスの実情は『情報を活用』するためのものではなく、いざという時のバックアップ型サービスに近い」とみている。市場には定まった「デファクト」はない。こうした状況を踏まえ、オンラインストレージサービスは十分に伸びを期待できる市場と見込んだ。このような経緯から2年前、コンシューマ事業を手がける「CPS-PT」が立ち上がった。メンバーは誰もコンシューマ事業を手がけたことがなく、手探りでの出発だった。(鍋島蓉子●取材/文)
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