視点

テレビ再編をユーザー視点で考える

2008/05/05 16:41

週刊BCN 2008年05月05日vol.1234掲載

 昨年秋からテレビメーカーの再編が勃発し、ここにきても、まだまだ動きは収まらない。今回、大規模な再編をもたらした原因は、全世界的なテレビセットの価格低下とそれに伴うメーカーの収益力の急激な低下だ。儲からなくなってきたのに、メーカー数が多すぎるという現実の是正作用が働いたのである。

 さて、再編の一方の重要なステークホルダーがユーザーである。再編というと、業界内の動きがクローズアップされるわけだが、実はユーザーに与える影響も大きい。ユーザーにとって、一連の再編はメリットなのかデメリットなのか。メリットは、各ブランドがサバイバルに向かう態勢がとられたことだ。このまま競争が果てしなく泥沼化すると撤退するブランドが出て、そのブランドを支持しているユーザーに大きな迷惑をかけてしまう。光ディスクでは、東芝のHD DVD撤退により、そのユーザーが被害を受けたことは記憶に新しい。

 ユーザーはメーカーの特色を買っている。東芝は東芝らしい映像があるから欲しい、ソニーはソニーらしい映像があるから欲しい。東芝らしい映像やソニーらしい映像というのはパネルと絵作りのふたつの要素で成り立っている。今回の再編では各社が同じようなパネルを使うというケースが増えてくる。そういう状況下で、ユーザーに訴えるものとは何か。

 今後は自分のブランドが持つ特別な画質価値をさらに徹底して磨き、提案していかなければならないだろう。そのために絶対的に必要なのは独自の価値を映像に込める絵作りの力だ。画像エンジンの部分で非常に強力な仕掛けを行い、その結果、自社の独自映像を打ち出すという行き方を推進すべきだろう。

 液晶のシャープと、プラズマの松下は、こうした水平分業化の流れにあって、自社内でパネルをつくり、自社内でテレビに仕立てることができる数少ないメーカーになった。だから、この2社には他社とは違う課題が突き付けられる。それが垂直統合ならではの価値を新しく見いだすことだ。水平分業では標準的なコンストラクションが主体になり、なかなかそこで独自性を見いだすことが難しい。しかしパネルから独自に設計、開発し、製造し、さらにそれを使うという立場にあるのならば、他社ができないことができるはずである。

 垂直統合ならではのトータルな新しい価値を提案できるのは特権であり、同時にそれは義務でもある。
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