IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>43.三州製菓(上)

2008/04/14 20:45

週刊BCN 2008年04月14日vol.1231掲載

トレーサビリティを導入

 埼玉県を拠点にして、主に米菓生産、販売を行う三州製菓(斉之平伸一社長)は、菓子専門店やテーマパークへのOEM供給など、「ニッチ市場」に着目し、業績を伸ばしてきた。新潟県に次ぐ米菓の生産県である埼玉県で、トップシェアを誇る。

 三州製菓は、いち早く経営にITを活用してきた。1988年に中型オフィスコンピュータを導入し、販売管理システムを構築した。その後93年には、大型オフィスコンピュータで販売・生産管理を実施。また、社内では自社開発のグループウェアを使った情報共有を行ってきた。99年には内田洋行のERPパッケージ「スーパーカクテルV1.5」を導入し、販売・生産管理システムを刷新。クライアント/サーバー型のシステムに移行した。

 そして05年、既存システムが古くなってきたことから、次の段階として、販売・生産・トレーサビリティ(履歴追跡)をトータルで実現するシステムを導入した経緯がある。

 同社は04年、ITコーディネータの町田行雄氏をアドバイザーとして迎え入れた。「ITコーディネータ協会に派遣をお願いしたところ、町田さんを紹介してもらった」(斉之平社長)ことがきっかけとという。

 三州製菓では「安心・安全」の追求のため、品質管理は長期間にわたって取り組んできた。当時はBSE問題など「食の安全」が問われはじめた時期でもある。町田氏は月に1回、同社に訪れ、現場社員で構成するIT委員会に参加。経営課題の洗い出しや目的を達成するための戦略立案などを行った。

 システムを再構築するにあたって分析を重ねた結果、重要な要因として導き出したのがトレーサビリティだった。「いち早くトレーサビリティシステムを実現した、大手食品会社の例をあげながら紹介していった」と町田氏は当時を振り返る。

 だが、その大手食品会社では、トレーサビリティを実装しているパッケージソフトがないために、独自にシステムを構築せざるを得ず、4億円もの費用がかかったという。

 そこでIT委員会では、具体的に業務で必要なシステム要件を導き出すため、「業務全体の流れを視覚化する目的で、データフローダイヤグラムなどを作成した」(町田氏)。複数のITベンダーに声をかけ、各社が持ち寄った提案書をもとにプレゼンを実施。その結果20年来の取引があり食品に関する知識も高かった日本オフィスメーションが、開発を担当することになった。

 日本オフィスメーションが提案したのは「スーパーカクテルFOODs(食品カクテル)」をベースに、トレーサビリティシステムをアドオンすることだった。三州製菓が導入していた「スーパーカクテル」は、食品製造業に特化したパッケージではなかった。パッケージにトレーサビリティをアドオンすることで、「(事例の大手食品会社に比べ)構築費用を格段と下げることができた」(斉之平社長)という。(鍋島蓉子●取材/文)
  • 1