次世代Key Projectの曙光

<次世代Key Projectの曙光>50.JFEシステムズ(下)

2008/04/07 20:42

週刊BCN 2008年04月07日vol.1230掲載

地震速報の需要旺盛、導入進む

 JFEシステムズ(岩橋誠社長)は、緊急地震情報配信システム「MJ@lert(エム・ジェイ・アラート)」を提供している。1995年、阪神・淡路大震災による被害を受けたことが、ソリューションを手がけるきっかけになった。同社は財団法人鉄道総合技術研究所の子会社で、緊急地震速報システムを手がける「ANET(アネット)」に出資後、同じく出資会社の三菱スペース・ソフトウエア(MSS)も独自システムをもっていたことから、協業することにした。MSSが開発、JFEシステムズが主に販売などを担っている。

 緊急地震速報システムには電気工学的な知見が必要だった。営業で訪れたリスクマネジメントの担当部署では、サービス品質レベルの要求が高い。そんなこんなで苦労を強いられた。だが、「思い描いていたイメージより、意外とすんなり導入が進んでいった」(稲葉真二・営業本部ソリューション第3営業部 主席課長)と振り返る。昨年、能登半島に続き、三重県の亀山を震源とした地震が発生。大手企業の生産ラインが緊急停止した。こうした背景もあり、事業継続の点からもビジネスは追い風だ。

 「エム・ジェイ・アラート」は、地震速報システムの回線や受信装置、配信サービス、インテグレーションをトータルで提供する。また、JFEシステムズが運用するデータセンターにある配信サーバーから情報を提供するので受信端末側でのメンテナンスが不要である点が大きな特色だ。競合他社も緊急地震速報システムを提供しているが、構築する際にシステム提供と情報配信などが別途になっていたり、受信端末のメンテナンスが必要で、ユーザーの負担が大きく、この点で「エム・ジェイ・アラート」は優位に立っているという。

 また、同システムの提供は社会貢献の一面も持っている。横浜市でも1ライセンスを導入し、実証実験が行われている。同市では、小・中学校への緊急地震速報の通知を考えている。教育施設は、1981年(昭和56年)の新耐震設計基準以前の古い物が多く、耐震改修が求められている。「ハード面の施工に加え、ソフト面の対策として考えられたのが緊急地震速報システムの導入だった」(同氏)そうだ。

 08年度(09年3月期)は、3億1000万円の売り上げを目指す。現在は大手企業中心の導入になっているが、需要が高まり価格が下がってくることも考え、中小企業にも導入をすすめたい考えだ。4月11日からは機械産業記念事業財団の展示施設「青山テピア」で同システムを展示する予定。(鍋島蓉子●取材/文)
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