次世代Key Projectの曙光
<次世代Key Projectの曙光>49.JFEシステムズ(上)
2008/03/31 20:40
週刊BCN 2008年03月31日vol.1229掲載
グループ企業の被害が契機
JFEシステムズ(岩橋誠社長)は、2006年、緊急地震情報配信システム「MJ@lert(エム・ジェイ・アラート)」を提供開始した。1995年、阪神・淡路大震災により、グループ内で甚大な被害を受けたことから、地震などの防災に対する意識が高まり、同製品を手がけるきっかけになった。「エム・ジェイ・アラート」は、気象庁の「緊急地震速報」を受信すると、配信システムがインターネット回線を通して、企業や団体に設置している専用機器に情報を伝達。大きな揺れが到達するまでの余裕時間を知らせ、人命や企業の経済的な被害軽減に役立てるものだ。
緊急地震速報システムは、財団法人鉄道総合技術研究所が開発を手がけ、鉄道事業者向けに提供していた。05年、同研究所は防災関連の新会社「ANET(アネット)」を立ち上げた。JFEシステムズは同社の雷検知ソリューションを販売していた。その後、アネットが新たに緊急地震速報システムを扱うこととなり、相乗効果を図ろうと2006年1月、アネットに出資したのだ。
アネットには同社のほか、三菱スペース・ソフトウエア(MSS、三宅道昭社長)、CRCソリューションズ(現伊藤忠テクノソリューションズ、奥田陽一社長)なども出資していた。MSSはつくば事業部が中心となり、独立行政法人防災科学技術研究所に協力するなど、地震に対する高い知見やノウハウを持っていた。そうしたことから、JFEシステムズはMSSとも協業し、「エム・ジェイ・アラート」の代理店契約を結んだ。MSSが情報配信システムの開発や配信事業を受け持ち、JFEシステムズでは販売、サービス提供と運用管理を担っている。
地震速報を扱うに当たっては、「まず、地震そのものを分かっていなかったため、そこから勉強をしていった」(稲葉真二・営業本部 ソリューション第3営業部 主席課長)。システムにはソフトウェアだけでなく、電気工学的な知見も必要とされた。また、今まではユーザー企業の情報システム部門に訪問すればよかったが、今度は「リスクマネジメントの担当部署にも訪問する必要があり、従来とは営業面で勝手も違った」と振り返る。費用対効果よりも、「何をしてくれるか」が重要視されるのだ。単に速報を配信するだけでなく、リスクを最小限にする仕組みなど、サービス品質に対する要求が高いという。例えば、24時間365日止まらない保守サポート体制なども課題となっている。(鍋島蓉子●取材/文)
- 1