視点
インフォシステクノロジーズの教育投資
2008/03/17 16:41
週刊BCN 2008年03月17日vol.1227掲載
日本の金融機関は、米国ではJavaによる開発がほとんどであることから、日本でも同じようにJavaで開発するように情報システム部門に指令する。しかし、日本のベンダーは金融のような大規模開発をオブジェクト指向で開発した経験がなく、コボルの開発体制で言語だけJavaにして開発するので、よほど技術力の高いエンジニアを集められた場合以外は、たいてい失敗する。
スリラム氏は、Javaではなくオブジェクト指向を教えるのでなければ、意味がないと主張している。これに対して日本では、オブジェクト指向を教えるのは時間がかかるので、Javaプログラムの書き方だけを教えている。そして、Javaプログラムが書ければ、オブジェクト指向開発ができるのだと錯覚している。このような見かけと実体の乖離が、日本のIT産業に広くみられる。
インフォシスでは売り上げの5%を教育に投資している。対してJISAの会員企業は1%以下がほとんどで、その1%の9割以上が新人教育に使われている。オブジェクト指向の概念は、米国では高校生が学校で学ぶことができるのに、日本の技術者は新人教育でJavaの書き方を教わるだけである。
もちろん、日本の経営者も技術者の教育に無関心であるわけではない。しかし、現場のトレーニング担当者によると、忙しいので欠席するが出席したことにしてくれと受講者から言われることが少なくないという。受講する技術者は自分の能力開発よりも会社の評価を優先するのでこうした事が起こるが、これではせっかくの会社の教育投資は効果を失ってしまう。専門職大学院として新たに設立された都立産業技術大学院大学には、自発的に能力開発をしようと考える技術者が修士号を目指して夜間と週末に学んでいる。だが、そこでも会社の業務のために出席できない場合が多発し、協同作業による学習に支障をきたしている。
技術者の能力向上に投資しないと、遠からず外国企業に日本の情報産業は駆逐されることになる。それを防ぐには、開発のペースを落として、技術者が実質的に能力開発ができる状況を作り出さなければならない。言うは易しく、成すは困難な経営課題である。
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