次世代Key Projectの曙光

<次世代Key Projectの曙光>46.アイ・オー・データ機器(下)

2008/03/10 20:40

週刊BCN 2008年03月10日vol.1226掲載

全部門の協力で「日の目」みる

 アイ・オー・データ機器(細野昭雄社長)は、ASPサービス「アイオーWebパイロット」の提供を開始した。昨年8月から直販サイトで利用していた動画サービスなどを自社ブランドで展開したものだ。「ウェブにつないで何かをしたい」という細野社長の思いから、昨年の11月下旬にプロジェクトが立ち上がった。

 同サービスは動画配信、HP作成、ブログ編集の3つで構成している。ウェブコンテンツを持っている企業はコストや環境、運用面で問題を抱えている場合が多い。CMS(コンテンツマネジメントシステム)を導入する際、サーバーを引っ越したり、機能拡張を行う必要がある。またホスティングなどの場合はソフト自体がインストールできないこともある。これに対して、サイバーステーションの独自技術「ドメイン中継通信技術」を応用したASPなら、サーバー、OSなどプラットフォームを選ぶことなく、コンテンツを編集でき、更新作業も簡単に行える。

 11月下旬にスタートし、2月1日には事業を立ち上げるという極めて短期間のプロジェクト。同社はハード売りがメインの企業だけに、従来は「物」を納入すれば売り上げが立った。今度は「無形」のものを売り、月々の売り上げを立てていく。「その既成概念を転換することに時間がかかった」(前野孝俊・CS部eーコマース課課長)と振り返る。技術面でも壁が立ちはだかった。ただのOEMではなく、自社のUSBメモリを認証キーとして組み合わせ、セキュリティを高めた形で提供していくというものだからだ。苦労したのは本人認証の仕掛け。「他社を例にとると、USBキーを誰に渡したかをそのつどメモしておいて、認証するやり方。でもこれでは本当に本人かわからない」。そこで、同社はウェブ上からサービス申し込みを行った際にログインIDを発行。その後、配送したUSBキーと合わせて、本人確認を行う仕組みを構築した。

 新しい企画を経営会議を通じて全部門に1か月かけて説明した。ストックビジネスだけに「必ず儲かるから」と採算性を訴え、各部門に協力を仰いだ。法務部やメモリ事業部、情報システム部など、各部門は協力的で、約款の作成、メモリの生産などで尽力してくれたという。

 他部門の協力により、何とか2月に動画配信サービスをリリースすることができた。問い合わせも増え、USBの生産も増やしているという。ブログ編集、HP作成ツールも順次提供する。今後は「主力のNASと組み合わせた事業なども検討中」という。(鍋島蓉子●取材/文)
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