ITジュニアの群像
第67回 富山工業高校、初出場で初優勝
2008/02/04 20:45
週刊BCN 2008年02月04日vol.1221掲載
「ターゲットサーチ」、状況分析が奏功
新ルールの採用で戦術の選択が拡大
課題となる「ターゲットサーチ」シリーズは2007年が3回目。対戦する2チームが直線上に陣取り、相手の位置(ターゲット)を推測しながらボールを投げて命中させる競技だ。相手の位置は自陣からは見えないため、ボールを投げるたびにターゲットにどれだけ近いかというヒントが与えられ、これを頼りにできるだけ少ない回数で相手に命中させたチームの勝ちとなる。06年からは、1動作ごとに「投げる」か自陣を「動かす」かを選択できるようになり、今回の「ターゲットサーチ2007」では、投げるボールの大きさが3段階に変化するようになった。ボールを発射せずに貯めれば、ボールが大きくなって命中率が高まるルールに改訂されたのだ。また、一番大きなボールを投げた場合、ターゲットに命中しなくとも落下地点に穴があき、両チームともその穴を越えて自陣を動かすことができないこととなった。
したがって、今回はボールを投げることによる相手の位置情報の取得、ボールを投げるか自陣を動かすかの選択、ボールを投げるか投げずにボールの直径を大きくするかの選択、最大径のボールを投げて生じる穴の利用…という4要素を絡み合わせたプログラムが要求されることになる。対戦は3ラウンド制で先に2ラウンドを先取したチームの勝ち。1ラウンドが終了するたびに5分間の作戦タイムが与えられ、その間に用意したプログラムの差し替えが可能になっている。
大会に先立って10月10日、埼玉県立三郷工業技術高等学校において参加34チームのプログラム同士を総当たりさせる、実行委員会による予選が行われた。この結果、久喜工高(埼玉)、那須清峰(栃木)、日立工高(茨城)、金沢北陵(石川)、富山工高(富山)、郡山北工(福島)、松本工高(長野)、宮城工高(宮城)の8校の決勝進出が決まった。なお、プログラムの総当たりによる勝敗などの予選結果は、決勝戦に進出した各校に事前に伝えられており、対戦相手のプログラムがどれほど強力なものかを睨みつつ、作戦を立てることになる。
優れた状況対応力で接戦を制した富山工
今回の会場は、対戦状況を表示するスクリーンのコントラストが高かったこと、ルール改正により投げるボールの大きさが変化することなどから、ゲームの状況を把握しやすく、従来の大会よりも「見て面白い」大会になった。
一方では、持ち込んだノートPCをサーバーに接続できず、タイムアップにより敗退するチームが続出した。これは、ふだん接続している学校内のLAN環境と、会場における接続環境の違いに加え、PCにインストールされたセキュリティソフトを解除せずに臨んだことが原因と思われる。この結果、前年度優勝校の金沢北陵と3位だった松本工高が初戦敗退するという番狂わせとなった。
接戦を制したのは富山工高。初戦で予選1位通過の久喜工高に2-1と手こずったものの、準決勝の日立工高、決勝の那須青峰をともに2-0で下し、初出場で優勝の栄冠を勝ち取った。2位は予選で久喜工高と同率1位だった那須青峰、3位は日立工高だった。4位以下は宮城工高、久喜工高、金沢北陵、郡山北工、松本工高の順である。
優勝した富山工高は3通りのプログラムを用意。先攻と後攻とでプログラムを差し替え、相手のターゲットに近接しつつ投てき機会を選び、ボールを大きくすることをによって命中精度を高めたことが勝利につながった。同校は初出場だったが、生徒たちは前大会でどのような戦い方のチームが勝ち残ったかを分析し、状況に応じて勝てる可能性の高いプログラムに差し替えるというしたたかさを発揮した。
審査員として臨んだ東洋大学情報工学科の村上真准教授は、「システムはグループで作るものであり、仲間と共同で作業を進めなければならない。そうしたプロセスを早いうちから何度も経験することにプロコンの意義があり、そのノウハウを蓄積した皆さんがIT分野の第一線で活躍することを期待したい」と講評し、各校の健闘を称えた。
次大会からは課題も進化する 新井誠プロコン実行委員長
工業高校を中心とした会員校からなる全国情報技術教育研究会は、文部科学省に対して、企業など実際の現場で使われる技術を学校教育にフィードバックしてほしいと要望してきました。
現在、これを受けて学習指導要領の改訂作業が行われており、「マルチメディア応用」については、よりネットワーク技術に重点を置いた「コンピュータシステム技術」に改訂され、早ければ来年から授業に反映されることになります。
全国高校生プログラミングコンテストは、現場で使われる技術を重視するとの観点から、第26回大会以降、ネットワークやサーバー・クライアント技術の要素を取り入れた「ターゲットサーチ」を課題として、対戦型の競技を実施してきました。
来年度からは、直線上で相手(ターゲット)の位置を探るこれまでの課題に替えて、平面上(2次元)のターゲットを捉える「CHASER」へと課題を進化させていく予定です。
すなわち、Web2.0(ブラウザを通して提供される各種Webサービス)に対する理解度や、より難易度の高いアルゴリズムが要求されるようになるわけです。
そうしたなかで、各校・各チームが独創性を競い合い、特色のあるアルゴリズムによって自らの技術力を表現していただきたいと思います。(談)
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