視点

著作権意識が抜け落ちがちな海外拠点

2008/01/28 16:41

週刊BCN 2008年01月28日vol.1220掲載

 著作権保護が遅れているという印象がある中国では、政府主導で懸命に正規版ソフトウェアの使用推進運動が展開されている。正規版ソフトウェアの推進は、WTO(世界貿易機関)に加盟した2000年に中央政府機関から始まり、05年には地方政府、06年以降は大企業や外資企業を対象に実行されている。

 こうしたなか、ACCSは大連市版権保護協会と共同で、日系のソフトウェア管理優良企業を表彰することになった。日本国内では、コンプライアンスや内部統制の考え方が進み、ソフトウェア管理体制が整ってきているのだが、海外の支店や現地法人は内部統制の範囲からは抜け落ちている場合が少なくない。そこで国内の延長として、海外の日系企業についてもソフトウェア管理の推進に取り組むことにした。表彰は1月23日、私も現地に赴き、大連市で行われた。

 大連市は、中国で唯一の「ソフトウェア著作権保護模範都市」に認定されており、副市長の指揮下、版権局を主体に正規版化運動が率先して行われている。JETROの調査によると、現地には05年時点で3000社を超える日系企業が進出している。大連市版権局では自主調査を行い、すでに日系企業を含む1000社以上の企業に対して、正規版ソフトの使用確保を要請しているという。

 中国は版権局主導で正規版化が推進されているが、韓国も違法コピー情報に対して検察庁が調査するなど、著作権保護は国家主導である。他のアジアの国を含め、現地では日系企業は外資企業であることや政治的な背景から、摘発のターゲットになっている。

 今回、大連で行った日系企業の表彰は、逆に見れば日系企業であってもソフトウェア管理が進んでいないことを表している。一方で中国は行政主導で対策が推進されており、問題企業はブラックリストに載せられ、改善がみられず侵害が深刻な場合は法的責任も問われる。事実、日系企業の中で罰金を求められた例を私も何件か知っている。

 海外に進出している日系企業は、現地においてもソフトウェア管理を徹底するべきだ。アジア各国は、著作権保護対策において本腰を入れている。日本国内と異なり違法コピー天国だと甘く見ていると、大問題に発展する可能性がある。

 ACCSは、企業ユーザーの法的リスク、情報管理の観点から、日本の親会社にも積極的に働きかけを行っていく。

 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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