次世代Key Projectの曙光
<次世代Key Projectの曙光>39.アスタリクス(上)
2008/01/21 20:40
週刊BCN 2008年01月21日vol.1219掲載
「SaaS」で先べん
SIerのDTS(赤羽根靖隆社長)の子会社アスタリクス(中島宏社長)は、2006年10月に設立されたSaaS(Software as a Service)型のビジネスアプリケーション基盤「Bizca」などを専門に手がける会社だ。設立当時、SaaSを手がけるベンダーはあまり存在しなかった時期でもある。中島社長は、親会社DTSの技術部に所属しながら、有志が集まった新市場開発室で新しいビジネスの仕組みをつくるべく企画を練っていた。
すでに企画自体は06年1月にできあがっていたが、当時は「SaaS」ではなくASP」と表現していたそうだ。「ビジネス的な部分に関しては、3─4人で検討していた」が、提案書を見た上司は「今さらASPか・・・」と渋っていたという。
日本では「ASP」が普及しそうだったが、「00年当時は回線が細かったことや、アプリケーションの使い勝手が悪いこと、またセキュリティなどにも問題があった」ことから、普及途上のままだった。世間的にも負の記憶が残っていることから、「『いまさらASP』と言われても仕方のないことではあった」。
だが、03年頃からインターネットの状況は変化した。ブロードバンドが普及し、企業での普及率が8割に達したことなどから、リッチクライアント環境の形成が前進、使い勝手が格段に改善していった。セキュリティに関しても、EC(電子商取引)が大きく進展し、企業間、個人間での金銭のやり取りも行われるようになったことで、「ユーザーの心理面のハードルが下がってきた。ASPに着手したのは『この企画は今なら生きる』と判断したからだ」と振り返る。
06年春には、みずほ銀行がセールスフォース・ドットコムを導入、雑誌で特集が組まれるほど話題になった。DTSの重要顧客は通信、金融だ。そのなかでも「メガバンクが導入した」というニュースが、事業承認を後押しする要因のひとつになった」と話す。こうして06年6月、経営会議で承認され、同年10月SaaS専門企業のアスタリクスはスタートした。
社内で事業として提供するのもひとつの手ではあったが、「親会社の事業の一つとなると、SaaSを手がけているということがぼやけてしまう」。「SaaSに特化した会社」として前面に押し出すことで市場に認知を図るほか、事業のスピード感も重視して分社化した。当時、SaaSの競合は少なく、開発系SIerではSaaSを手がける会社はほとんどいない状況だった。(鍋島蓉子●取材/文)
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