IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>29.フードケア(上)

2008/01/07 20:45

週刊BCN 2008年01月07日vol.1217掲載

IT利活用で大手に対抗

 国立社会保障・人口問題研究所によれば、2030年には65歳以上の構成比は約30%にまで達すると予測されている。厚生労働省の調査でも、要介護者は05年に357万人に達し、年々増加の一途。日本の高齢化は急速に進み、咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)が困難な高齢者向けの介護食品は需要を増している。

 最近では、食品や製薬などの大手メーカーが介護食品市場に相次ぎ参入し、競争が激化している。こうしたなかで、神奈川県相模原市にある介護食品の企画・開発・販売会社、フードケアは、早くから同市場が拡大することに着目。大手食品メーカーから独立した竹内豊社長が、97年に起業したベンチャー企業で、業界では存在感を示している。

 大手メーカーが、在宅介護者向けに市場を伸ばそうとする一方、同社は特別養護老人ホームや医療機関、福祉施設に対し、病態栄養学などの知識を生かした食品を企画。委託先で製造して、全国に67ある代理店の広範な供給ルートを活用した販売で、売上高を順調に伸ばし続けている。だが、「少数精鋭(現在、従業員13人)で事業を進めてきたものの、競合に対抗するには問題点があった」(竹内社長)。融資を仰いだ地元の八千代銀行・相模原支店長(当時)に、竹内社長が問題点と感じる悩みを相談したところから、IT利活用が本格的に始まることになる。

 支店長は05年1月、この当時から金融機関と連携して「IT利活用による業態変革」を支援していたITコーディネータ(ITC)集団である東京IT経営センターの田中渉・代表取締役を、フードケアに紹介する。フードケアは田中氏の支援を受け、「IT経営成熟度診断」を実施。07年度(08年1月期)までの「理想像」や最低限の「事業計画」「経営理念」などをまとめた。「市販ソフトウェア(弥生販売)を使って、簡単な受発注管理はしていたが、継続的に成長するうえで、煩雑化する同業務を見直す必要があった」(田中氏)と、各種計画に基づき、段階的に改善の手を打ってきた。

 フードケアは、独自に企画した介護食品を委託先の食品工場で製造している。「リードタイムを短くし、“できたて”を届けたい」(竹内社長)というポリシーで、午前11時までに受注すると、全国6か所の倉庫へ手配して「当日出荷」することを基本としている。

 そのため、「毎日、午前中の事務所はFAXの山になり、電話が鳴りっぱなし。パニック状態になっていた」(松下誠・総務部係長)ことから、伝票処理が主体の「弥生販売」を有効活用してデータを一元管理できる新システムを構築、06年4月に稼働させている。限られた人員ながら、ITを利活用して生産性がアップ。07年度の売上高は前年度に比べ大幅増になる。(谷畑良胤●取材/文)
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