ITジュニアの群像
第65回 競技部門は敗者復活組が大健闘!
2008/01/07 16:18
週刊BCN 2008年01月07日vol.1217掲載
宇部高専「オレンジ」チームが優勝
入札で石垣の完成を競う 主管校は人海戦術で対処
第18回大会競技部門を特徴づけたのは、(1)出題の秀逸さ、(2)運営の素晴らしさ、(3)決勝までの試合経過──の3点だった。
出題のタイトルは「石垣工務店」。会場となる津山文化センターが石垣の美しい鶴山公園(津山城址公園)に面していることから、石垣の石に見立てたパズルのピースを石垣の形に組み上げていくという競技内容である。ゲームごとに開始15分前、石垣枠の形状、出品される石の種類と数、入札回数、各入札の最大入札石数、最大落札石数が伝えられ、各チームにはこの条件に基づいて戦略を組み立て、入札を繰り返してピースを入手し、一定の条件に従って枠にはめ込むことにより石垣を完成させていく。
勝敗の判定は、終了時の石垣枠の空き面積、石垣の上部平坦部の形状、残っている通貨ポイントなど、優先順位をつけた6項目によって行われ、初日の1回戦では7グループの上位2校ずつが準決勝に進み、敗れたチームは敗者復活戦(5グループ)から上位2校ずつが準決勝に進む。
今回はステージ上に木枠を設置し、ピースの石も木材を使って実際に積み上げられ、その経過が観客席からリアルタイムに見えるように工夫された。積み上げるピースには津山名産の木工品(特注品)が使われた。競技部門は、PC上でプログラムとして完結するため、観客からは競技の経過が見えにくいという難点があるが、「石垣工務店」はその難点を見事にクリアし、会場は熱気と興奮に包まれた。
これほど「見て面白い」競技をよくも作り上げたものだ、と評価する声が多く聞かれたが、これを可能にしたのが主管校・津山高専の人海戦術だった。1試合最大7─8チームで戦われるためチーム数だけ審判員が必要で、さらにプログラム上で入札された石の実物(木材のピース)を舞台裏から迅速・正確に配達するために同校の学生が動員され、汗だくで運営に協力。そのチームワークは特筆すべきものだった。同校によると、校内では動いていた運営システムが会場に運び込んだ時点ではうまく動かず、担当教員や学生たちが懸命に修復する一幕もあったそうだ。
優勝は宇部高専 敗者復活戦から
初戦から決勝までの試合経過も波瀾万丈だった。各校とも分岐限定法、遺伝的アルゴリズムなどを駆使。石の配置パターン、入札情報の収集と解析、評価修正、履歴参照システムからの情報取得と解析など、1チームで2─4種類のプログラムを準備し、競技の進行に合わせてそれらを切り替えながら戦った。
初日の1回戦を突破して準決勝に進んだのは、阿南、釧路、沖縄、長野、鹿児島、長岡、東京、都立(品川)、福井、宮城、新居浜、広島商船、石川、仙台電波の14校だったが、このなかで初選の決勝戦までコマを進めたのは沖縄と広島商船のわずか2校だけ。決勝戦に進出した6校のうち、宇部、高知、鳥羽商船、茨城の4チームは初戦敗退で敗者復活戦からの勝ち上がりだった。また、第16─17回大会連覇をはじめ過去4大会連続で3位以上という抜群の戦績を誇る久留米高専は初戦、敗者復活戦とも敗退、大会3連覇を逸した。
注目の決勝戦は、敗者復活戦、準決勝をともに1位で通過した宇部高専「オレンジ」チームが後半じりじりと他校との差を広げて優勝。文部科学大臣賞を獲得した。2位は高知高専「がき☆すた」チーム、3位は広島商船「石垣名人」チームだった。
宇部高専が用いたアルゴリズムは、石の配置パターンを出力しておいて、その石の状態(購入した、他校に購入された、まだ残っている)を色別に表示するプログラムを中心に、入札情報処理などのサブシステムを組み合わせたもの。2日目の3連勝について、同校5年生の木村照隆さんは、「石の並べ替えのプログラム精度を上げたこと、ビデオで初日の傾向を観察し、他校が購入しそうな石を敢えて捨てる“逆張り”に入札方法を変更したことが勝因」と冷静に分析。「2年生のときから4年連続で競技部門に出場してきたので、卒業までに優勝できてよかった」と喜びを語った。
なお、競技部門で特別賞を受賞した鳥羽商船は、課題部門2チーム、自由部門1チームと合わせ、本選出場の4チームすべてで特別賞受賞となった。
次回会場はいわき明星大学に 奈良宏一福島高専校長
第18回大会は、主管校である津山高専の教職員・学生が一体となった見事な運営によって本当に盛り上がりました。次回の福島大会も津山大会に引けを取らない運営を目指しますが、正直なところたいへんなプレッシャーを感じています。
福島高専には、プロコンに関係する学科として電気工学科とコミュニケーション情報学科があり、後者は全国でも珍しい文系学科(経営学)として、工学系科目-ビジネス系科目の協働(シナジー)効果・複眼的な視野の獲得をめざしています。一方では、他校のような情報工学科(ソフトウェア)を持たないという、プロコン準備・運営上のハンディがあります。幸い、福島高専は各学科間のコラボレーションや、教職員学生間のコミュニケーションが円滑で、地域社会との関係も良好ですから、情報工学科を持たないハンディを補うべく、全校が一致協力して大会の準備・運営に当たりたいと思います。
次回の会場は、いわき明星大学のキャンパスをお借りします。会場が広くなるので、その広さを活かしたイベントになるように工夫をすること、また、いわき駅周辺には宿泊施設が少ないため、湯本温泉やスパリゾート・ハワイアンセンターなどと交渉しつつ受け入れ体制を整備することなど、現在、各方面の協力を得ながら準備を進めています。
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