次世代Key Projectの曙光

<次世代Key Projectの曙光>35.内田洋行(上)

2007/12/10 20:40

週刊BCN 2007年12月10日vol.1215掲載

「ユビキタス・プレイス」の実現へ

 内田洋行(向井眞一社長)は、ユビキタス社会における新しいワークスタイルやライフスタイルを支援する「場」の力を最大限に引き出す提案として、「ユビキタス・プレイス」を推進している。中核となるのは、建築・内装工事なしで可変性の高いユビキタス空間を実現するシステムユニット「スマートインフィル」と、空間内での情報コミュニケーションを支えるソフトウェア群「スマートウェア」である。

 オフィスにおける従来の情報装備シーンでは、建築や家具側に情報機器類を埋め込み、一見美しいが、固定的に作り込まれた空間が一般的であった。また、IT装備を充実させても、使い方の分かる専門家を置かなければ使いこなせないなど、面倒で利用者の負担も高かった。

 「建築と情報機器・ITの進化速度と運用方法にはもともと差がある。機器類が固定的に組み込まれた空間は実は陳腐化が早く、変化対応できないので結果的に運用コストも高くつく」といった潜在課題があった。そこで、顧客の要求や「場」の成長に応じて空間自体を柔軟に組み替えることができ、IT装備も誰もが易しく使いこなせる環境を実現しようと、研究開発とトライアルを繰り返した。

 ユビキタス・プレイスを推進している中核部門、次世代ソリューション開発センターは、2001年に立ち上がった。設立当初は「管理職1人対新人45人の異様な集団。もはやマネジメントどころではなく、新技術蓄積方法にも従来とは違う仕掛けが必要だった」(村浩二・次世代ソリューション開発センター長)。立ち上げ期に苦心したのが、「求める技術を保有する企業や大学の研究プロジェクトに送り込んで体得させること」だった、と話す。新入社員は出先で技術知識や方法論を体得し、一定期間の後に社内に戻ると、皆でナレッジを共有しあった。こうして企業連携や産学連携を積極的に進めていくなかで、新たな開発コンセプトが幾つも生まれた。

 この組織より少し遅れて立ち上げられたデザイナー組織(テクニカルデザインセンター)とも一緒になって、これからの情報活用空間のあり方について研究を重ねた。03年にはアイデアを可視化する場、外部の研究者やデザイナーのコミュニティが集う場として「協創工房」をつくり次世代ソリューション開発センターとテクニカルデザインセンターを中心に外部のコミュニティなども加わり、さまざまなアイデアを形にしていった。(鍋島蓉子●取材/文)
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