IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手
<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>28.ものづくりネット板橋(下)
2007/12/03 20:45
週刊BCN 2007年12月03日vol.1214掲載
ITで異業種職人の技が結晶に
「ものづくりネット板橋」(紀孝会長=紀塗装工業所・代表取締役)は2000年3月、東京・板橋区にある精密切削、板金、塗装、シルク印刷、金型製作、冶具類製作などを得意とする小規模製造業の経営者で結成した「職人集団」である。元々同地区は、精密機械技術で世界トップレベルにあった。しかし、時代の流れとともに「個々の企業だけでは実現困難なケースが増えた」(紀会長)とみて、「協働開発」「協働生産」「協働販売」など「協働」をキーワードに製品開発を進めている。
このグループの仲間意識が高まり“ブレイク”したきっかけは、ITコーディネータ(ITC)の八木田鶴子氏(テオリア社長)が中核となって開いた「パソコン教室」にある。月1回以上の開催で、全会員が電子メールを扱えるようになり、「協働開発」製品別のメーリングリストでの連絡や情報共有化、ネット上の「バーチャル展示会」の開催、同グループのホームページ開設を実現して、時にはネットを通じて、外部から仕事が舞い込むこともある。「最初は、パソコンを購入した企業のセットアップや回線接続なども手伝った」と、八木氏はIT利活用の第一歩から粘り強く支援してきた。
同グループ内で消費者ニーズを捉え、「協働開発」によって生まれた製品は数多い。例えば、紫外線の強度を手軽にチェックできるクレジットカード風の「UV Check Card」は、ガラス塗装の現場から出たアイデアを基に、金属加工に長けた職人らで開発。「バーチャル展示会」などを通じて流通卸の注目を引き、百貨店での販売が実現した。「1人でできない仕事でも仲間同士ならできる」(紀会長)ことを実証した例だ。最近完成した「虹発生装置」は、超音波装置を手がけるメンバーの発案による。水滴の粒径などを計測し、7色の虹が発生する“箱型”装置をつくり出した。
この過程では、八木氏が仕掛けたパソコン設置が奏功。仕事が舞い込んだり、アイデアが浮かぶと電子メールで情報交換する。以前は製品を「協働生産」するためのCADデータや図面などをFAXでやり取りしていた。非効率で、アイデアを早期に具体化するまでに長い時間を要していたが、今は違う。当初は、同グループの伝達用にFAXサーバーを立て、WebFAXで情報交換していた時期もある。
ホームページでは、会員同士がお互いに取材し合い「会員紹介」として特集を掲載している。「この特集でメンバー相互の“強み”を知ることができた」(八木氏)。地道ではあるが同会メンバーはITを活用する喜びを肌で感じている。(谷畑良胤●取材/文)
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