視点

ITコーディネータの役割増大

2007/11/26 16:41

週刊BCN 2007年11月26日vol.1213掲載

 ITコーディネータ協会は10月19─20の両日、東京の大田区産業プラザで年次イベント「ITC Conference 2007」を開催した。主題は、前回に引き続き「経営とITの融合による経営革新」とし、副題は「ITコーディネータは企業をどう変えたか」であった。資格認定者が累計7400人強に達したITコーディネータ(ITC)の活動は、中小企業の「IT経営」に、どう影響したかを問うためである。

 実際に、ITCが支援して「IT経営」を実践した中小企業が蘇生したり、苦境を脱した成功事例が多く出ている。全体の約75%を占める「企業内ITC」の活躍は、従来あまり目立たないといわれてきたが、顕著な成果を上げた事例が報告された。昨年度、当協会が打ち出した「育成から実践へ」の方針は、確実な成果を上げつつある。

 しかし、国家的な課題として「中小企業のIT化」が叫ばれているが、日本の中小企業のIT化は思うように進んでいないのも事実。社会経済生産性本部の「OECD加盟諸国の労働生産性」調査によると、日本の労働生産性は19位で、主要7か国中最下位である。そのため、当協会としても、凋落に歯止めをかけるうえで、「経営の視点」からIT化を支援するITC活動が一段と重要性を増してきていると考えている。

 私は現在、ITCの活動をさらに活発化させるため、発足(01年2月)以来、当協会をバックアップしてくれた理事会社をはじめ、できるだけ多くの企業を訪問し、ITC活動への再認識を呼び掛けてきている。日常業務に追われる企業のために、3日間で同ガイドラインのエッセンスを学べる簡易版のセミナーも実施し、ITCの理論を生かす場を広げようと努力している。

 また従来、ITベンダーと独立系ITCとは、互いに競う傾向があるといわれてきたが、両者がライバル心を燃やすのではなく、補完的な関係強化を図り、互いに協力して中小企業のIT経営化を支援する意義は大きいと考える。できれば、ITベンダー内にできるだけ多くのITCを養成してもらい、独立系ITCと同じ目線や方法で中小企業のIT経営化を強力に推し進めてもらいたい。いずれの場合でも、ヒト・モノ・カネが不足し、かつITへのアレルギーを持つ経営者が多い中小企業において、IT経営化を忍耐強く積み重ねていくことが、中小企業側の理解を得られることになるだろう。
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