ITジュニアの群像
第63回 弓削商船、課題部門の最優秀賞に
2007/11/19 20:45
週刊BCN 2007年11月19日vol.1212掲載
鳥羽商船は審査員賞をダブルで獲得
課題のテーマは昨年と同一 2年めに入り磨きがかかる
18回目を迎えた今大会は天候にも恵まれ、初日の6日は快晴で最高気温26℃、2日目の7日も晴れで28℃と、およそ10月初旬とは思えない暑さ。会場となった津山文化センターも全国から集まった高専生の熱気に包まれた。
課題・自由両部門とも初日はプレゼンテーション、翌日にデモンストレーションが行われた。予選参加41作品の中から選ばれた21作品で競う課題部門では、テーマとなる「子供心とコンピュータ」が2年めとあって、各チームとも前年に比べて課題を消化して練り上げた作品が多く、とくに上位チームは甲乙つけがたいハイレベルな競争となった。
プレゼンとデモに加え、操作マニュアルの適正さとプログラミングリストをチェックする厳正な審査の結果、課題部門では弓削商船高専の「Beauty and the Beads」が最優秀賞(文部科学大臣賞)の栄誉に輝いた。
この作品は、ビーズのオリジナル作品を制作支援する3次元CADシステムで、ビーズの制作に当たってその作品のイメージを3次元CADでオブジェクトにし、このオブジェクトをビーズに置き換えて完成時の全体像を把握するというもの。ビーズ化した3次元データから3次元と2次元の設計図を自動的に作成することができ、設計図を見ながらビーズが編めるように、アニメで示される設計図の画面を音声やフットスイッチで操作するという親切な設計と、豊富な機能をシンプルな操作で実現した完成度の高さが評価されての受賞だった。
アイデア出しとアルゴリズムに2か月、機能の実装とチェックに3か月をかけたというこの作品の受賞について、弓削商船チームは、「やれることはすべてやり尽くしたと自負しています。入賞は予想していなかったので、最優秀賞受賞という結果に驚いています」と喜びを語った。
優秀賞獲得は徳山高専に 鳥羽商船がダブル特別賞
課題部門の優秀賞には徳山高専の「おはじきぱっちん♪」が選ばれた。この作品は、おはじき遊びを学びながら得点を競い、加減算・虫食い算をマスターするというもので、ウェブカメラとプロジェクターというありふれた道具を使いながら、プログラミングの妙味で子供心をひきつけたとして評価された。
また、審査員特別賞は、鳥羽商船高専の体験型文字学習ゲーム「ぴったんこもじもじ」と、同校のゲーム「E・M・ LEGOlution」、仙台電波高専のメロディ付き物語作成ソフト「muphic(みゅーふぃっく)」、舞鶴高専の飛び出す絵本作成ソフト「ぽっぷあっぷ」の4作品が受賞した。鳥羽商船は前回に引き続いての特別賞受賞だったが、今回は出場した2チームがともに受賞するなど強豪校としての実力をいかんなく発揮した。
高専プロコンは発足当初から国際交流を目的の一つとして掲げ、ここ数年、ベトナム、モンゴル、中国などから参加チームを招いてきた。今回も海外勢として大連東軟情報学院(中国)とベトナム国家大学ハノイ校(ベトナム)の2校が参加。とくに東軟情報学院チームは「I want to fly」というテーマで、プロジェクターから投影される自然の風景の中を、センサーを背負った操作者の動作によって鳥が飛翔するソフトを出展。その発想の卓抜さとバーチャル技術によって審査員の称賛を集めた。
なお、大連東軟情報学院には特別賞(国際交流賞)、ベトナム国家大学ハノイ校にも特別賞(技術賞)が授与された。
手作りの“もてなし”で大会を運営 阿部武治プロコン委員長
この町で本当にプロコン大会が開けるのか…。開催が決定された時点で、主管校の教職員たちはいささか不安気な面持ちであった。津山市は周辺を含めても人口11万人ほどの地方都市。岡山県の内陸部で交通の便も悪く、何より会場が限られ、宿泊施設も足りない。
それならば、地方都市津山らしい“もてなし”を最大限見せようじゃないか、と阿部武治校長をはじめとする学校スタッフの奮闘が始まった。プロコン大会のイメージを全教職員で共有するために、前回の茨城大会のDVDを使って視覚的なイメージを伝え、過去の大会のドキュメントを参考に運営のマニュアルを作成。とりわけ、今大会では競技会場の設営とシステムの運用に力を注ぎ、競技部門は久々に手に汗握る興奮と感動の一大イベントと化した。
「全国から参加した学生や関係者に喜んでいただくことができ、ほっとしています。学校としても全教職員・学生が一体となって取り組むことができました」と阿部校長は振り返る。
会場では、電源車2台を常時動かして電力容量を確保するとか、スクリーンを新調するなど、舞台裏はてんやわんや。「そんな難題も多くの大会関係者のご努力や、協賛企業の支援で乗り切ることができ、大変感謝しております」。この経験と貴重な情報はドキュメントとして次回主管校の福島高専に引き継がれる。
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