IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>24.ITC Conference 2007編(下)

2007/11/05 16:18

週刊BCN 2007年11月05日vol.1210掲載

ITCは、アクション起こす“宣教師”

 「地球環境問題と並ぶ課題として、中小企業のIT利活用を重点化する」--10月19-20日に開催されたITコーディネータ協会主催の「ITC Conference 2007」で挨拶に立った経済産業省の八尋俊英・情報処理振興課長は、ITコーディネータ(ITC)の社会的な役割の重要性を、地球環境問題と比較してこう述べた。「米国ではエバンジェリストがIT利活用の知見を広めている。日本では、中小企業へより実際にアクションを起こす“宣教師”的な役割としてITCが信者を増やしている」(八尋課長)と、地域に密着したITC活動の拡大に期待を表明し、同省としても支援を強化すると明言した。

 2001年にITC制度が始まって以来、約7600人の有資格者が生まれている。中小企業は、90年代にオフコンをこぞって導入した。95年に「Windows95」が発売されて、オフコンを「オープン化」する動きを強めた。しかし、ITベンダー側と経営者側の描くIT利活用像が食い違い、「非効率なIT化投資」を招いた。この失敗がトラウマになり、日本の中小企業のIT化は世界に比べ大幅に遅れることになった。

 中小企業のIT化が遅れることは、生産性向上を鈍らせ、製造業などが世界競争に敗れることを意味する。そこで登場したのがITCである。ITCは「ITCプロセスガイドライン」に従い企業を支援する。そのプロセスは、「戦略経営」「IT戦略策定」「IT資源調達」「IT導入」「ITサービス活用」まで、5つのフェーズで構成されている。経営戦略と具体的な実施内容との整合性をチェックし、最終的にはIT投資対効果を報告する。

 これまでの当連載で取材した事例を振り返ってみると、1社に対してITCが「関わり過ぎ」といえなくもない。優秀なITCには、複数の中小企業から依頼が殺到。1社に「関わり過ぎる」と、同時期に複数の事例に対処できない。また、活発なITCは、次々と案件を探そうとしているが、「中小企業経営者にセミナーなどへの出席を依頼しても、なかなか参加してもらえない」と嘆くITCもいる。中小企業のIT経営に関する意識変革を喚起する必要もありそうだ。

 こうした課題を解決する手段として、SaaS(Software as a Service)/ASPが注目度を増している。「電子申請を含めSaaSに関する実証実験を進め、地域の実情に応じた施策を講じる」(八尋課長)と、ITCと連携したSaaS事業を本格化する計画だ。ITコーディネータ協会の関隆明会長も「ITCの認定試験をレベルアップして、企業へアプローチする力をつけさせる」と、ITCの活動の場を広げる戦略を推進する。約400万社の国内中小企業すべてにアプローチするには、ITCの数を増やすことと、SaaSなど開発工程を削減できる仕組みを使い、効率よく企業へ対処することと言えそうだ。(谷畑良胤●取材/文)
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