視点

ソフト開発技術者向きテキストの試作

2007/10/29 16:41

週刊BCN 2007年10月29日vol.1209掲載

 本欄の前回で、一念発起してソフトウェア開発技術者向きの本格的テキストを作ると宣言した。というのも、世の受験参考書は、ややもすると一夜漬けを勧めていて、課題の面白さや大切さを伝えきってないようにみえたからだ。

 いちおう、午後の試験問題対策を中心とする200ページ弱のテキスト第1版を若い友人に贈呈できた。しかし、一人で頑張るのはさすがに厳しく、目標の1/4の達成も怪しいのが実態だ。というのも、この1/4もこの秋に彼女が試験に合格してくれないと未達に終わるからだ。

 残りの3/4は、試作テキストが

(1)本質的なところを分かりやすく解説しきれていない(2)簡潔で段階的な(教育学的・ペダゴギカルな)自習を促がしてない(3)優れて楽しい読み物になっていないという点に尽きる。つまり、図やメタファを用いた基本術語や原理の簡潔な紹介が、圧倒的に不足している。自然に習得できるシラバスが考案できてない。ユーモアや諧謔が足りない。

 もうちょっと具体的に例を挙げてみれば、「ソフトウェア工学」、なかでも1ダースほどある「設計法」を、その必要性・有効性によって簡潔に紹介しきれていない。

 「リレーショナルデータベース」や「オブジェクト指向法」の限界を、集合論までさかのぼって説明しきれていない。

 テキストでは、ヴィットゲンシュタインを例にだしてしまったが、視点子の膂力では相当のページ数を要し、しかも分かりやすくない。

 「情報セキュリティ」についていえば、公開鍵暗号系という極めて難しい概念を噛み砕いて紹介できていない。このあたりは、サイモン・シンの『暗号解読』のほうが読みやすいようだ。

 「アルゴリズムとデータ構造」に関しては、森口繁一先生の著作には、とても敵わない。頻出する試験問題の単なる解説に終わってしまっている。中学高校の理数の素養を磨き、長文読解問題をすばやく解ける国語力を強調するだけになってしまっているようだ。

 これでは、そんじょそこらの受験参考書と変わり映えがしない。とにかく、大言壮語するものではないと思い知らされたことではあった。

 体育会系の凡人としては、敗者復活戦があるのが救いだ。確実に友人は基礎力を上げているようだから、とりあえず試験の合否にオタオタせずに、テキストの洗練にゆっくり励むことにしよう。
  • 1