地域を駆けるシステムプロバイダ 列島IT事情
<地域を駆けるシステムプロバイダ 列島IT事情>中国編(上)
2007/10/29 20:37
週刊BCN 2007年10月29日vol.1209掲載
“支店経済”で東京から仕事得る
ニッチソフトや上流工程のような付加価値必要
■大学とのパイプで人材を獲得 ソフトウェアセンターで育成
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人材育成の取り組みでいえば、第三セクターである広島ソフトウェアセンター(吉川慶一郎社長)がその役割の一端を担っている。同センターは大手企業や地場ベンダーの資本が入っており、人材育成や既存産業の情報化支援に取り組んできた。各職業訓練校の委託授業での障害者などへの研修、最近では「社会人の学び直しの場を提供している」(山本研一専務)という。
こうしたIT教育を終えた障害者については、中国サンネットと広島県、広島市が共同出資する、重度障害者雇用のための第三セクター、広島情報シンフォニー(森脇博史社長)などで雇用の門戸を開いている。同社は広島、岡山の大手流通のアウトソーシングやソフト開発を軸としている。同社では、「自動車メーカー・マツダのウエートが高く、また、地場では大小含め70ほどの図書館にシステムを導入している」(鈴木克治会長)という。
広島県のIT業界は、他の地域と同様、ゼネコン体質の下請け構造から抜け出せずにいる。マツダの企業城下町でもあるが、支店経済で、大口ユーザーはシステムを東京などの大手ベンダーに発注し、地場ベンダーは下請けに回ることも多い。地場では単金が安すぎるため、東京へ仕事を取りにいくのだという。「広島のユーザーは、名の知れた大手ベンダーに発注するブランド志向が強いし、保守的。こうしたなかで、大手ベンダーが手を出さないようなニッチなソフトを手がけている地場ベンダーが地場の直取りをすれば強い」と持論を展開するのは、エコー・システム(鹿毛秀之社長)の宇郷亮会長だ。
OSSを使ったシステム構築を手がけるメディアフロントの小松誠社長も「下請け企業はより上流工程の仕事もこなせるような付加価値を身につけ、またベンダー自身が独自の色を出していく必要がある」と考えている。
■地場製造にシステムを提供 ニッチな市場で主導権とる
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「売上比率でいえば、65%がFA、35%がOA(オフィス・オートメーション)系。OA系は同業他社が多いので、あまり力は入れていない」と実情を語る。FAは独特の営業の難しさや、導入にかかる手間、また絶対にミスが許されないシステムであるなどの条件が参入障壁を押し上げている。同社は「マイコン基板など、ハード開発も手がけ、メーカー系のベンダーよりもコストを安くできる」ことが強みだ。ただ、「福山地区だけでは仕事が足りないため、名古屋、大阪などにも仕事を取りに行っている」そうだ。
福山市の地場ベンダー、エーアイ(水谷薫社長)は、「派遣や下請けはほとんどやっていない。地元に根を生やしていかなければいけない」と語る。同社は、拡大路線を突き進んだ末に、経営が厳しくなったことから、中国のオフショア開発や、東京支社も廃止した。先代から経営を任された水谷社長は「まずは既存のユーザーに目を向け、その後、新規の顧客を開拓する」と経営改革に乗り出した。
同社は顧客にかつて納品したシステムの再販を始めた。12年前に作ったIPA認定の「家具屋姫」は地場産業である家具製造業に向けて開発したが、「家具といっても福山の中心は婚礼家具。最近は婚礼家具の市場が伸び悩み、システムも入らない」ため、5年前開発した「家具屋姫web」は電機製造業などに向けて販売している。
この家具屋姫が製造業と接点を持つための橋頭堡でもある。2006年、製造業の設計部に向けて、図面管理システム「e-図面」を販売開始した。設計部にCADは入っているものの、肝心の図面が管理されていないという課題を発見した。「ここに着目し、図面の切り口からアプローチしようと考えた」ことがきっかけだ。
HPで紹介し、営業は受身的ではあるが、引き合いはあるという。今は「“ニッチ”を深く掘り下げて、商談の主導権を握る」。直販で実績を積み上げ、将来的には基幹システムなどの部品として、この「e-図面」を組み込んでいきたい考えだ。
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