視点
先進国にもある海賊版事件
2007/10/22 16:41
週刊BCN 2007年10月22日vol.1208掲載
事件は、イタリア財務警察アンコナ県支部と、イタリア国内での著作物の流通を許可するシールを発行しているイタリア著作者出版者協会(SIAE)が協力し、2005年以降で30万点以上もの海賊版を流通させていた卸業者を摘発したもの。海賊版の売上総額は300万ユーロ(約4億9000万円)に及んでいる。容疑者らは、SIAEに対して偽造契約書を提出することで販売認定シールを不法に入手、日本の権利者に対価を支払っていなかった。
発表は、ローマからユーロスター・イタリアに乗って北に4時間弱のアンコナで行われた。9月26日に行われた記者会見には、クネオ財務警察大佐、アルファーノSIAE海賊版対策本部長、在イタリア日本大使館の南書記官とともに私も出席した。
ここで私は、テレビカメラ3台を含む20人近い現地メディアに対して、財務警察への謝意ほか警察発表の範囲でコメントを述べた。
今回の摘発は、今年5月、ACCSとSIAEとが提携合意した海賊版対策の一環であり、刑事手続きとしては2度目。04年以来、われわれが活動してきた成果の一つと言える。
ACCSでは、これまでの活動をまとめ、著作権侵害を受けた場合の対応策の参考になるよう、「EUにおける著作権侵害対策ハンドブック(イタリア編)」を文化庁の委託事業として作成することになっている。さらに、11月に東京で開催される「国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)」の日米欧民間団体連携会議や外務省文化交流担当参事官へも、イタリアでの著作権侵害の実態を踏まえた今回の摘発事件を報告するつもりだ。
今回の事件では、SIAEに提出されていた偽装契約書が、フランスなどに所在する架空の会社名義のものだったことが明らかになった。
イタリアでの活動を始めて現地に何度も足を運び、街のショップで海賊版が販売されている状況を見て、またSIAEなど現地機関と話し合いをしてきたなかで、これまで文化的に進んでいると思い込んでいた欧州といえども問題があることを知った。このことはもっと広く知られていいと思う。
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