視点

フルHDで様変わりのテレビ市場

2007/10/15 16:41

週刊BCN 2007年10月15日vol.1207掲載

 デジタル家電市場が好調だ。BCNランキングによれば、薄型テレビは台数ベースで平均130%、金額でも115%という高い成長率を維持している。

 今年はスポーツなどの大型イベントがないだけに、当初は需要の谷間となることが懸念されたが、実際には年末商戦並みの伸び率が続いている。なかでも特徴的なのは、デジタル製品につきものの価格低下に歯止めがかかっていることだ。液晶テレビの場合、年間3割近い価格低下に見舞われた時期もあるが、今年9月の平均単価は前年同月に比べて7%減にとどまり、年末商戦用の新製品が出そろう10月以降はさらに前年並みの維持も期待できる状況だ。

 この現象は、液晶テレビへの根強い需要もさることながら、メーカー側の巧みな仕掛けによってもたらされた側面が強い。キーワードとなっているのが、通常のハイビジョンよりも高精細な描画機能をもつフルHD対応だ。ハイビジョンの表示画素数が1366X768に対して、フルHDは1920X1080と、より高密度化。もっとも、両者を並べて比較してみても、40インチ前後では、映像のきめ細かさはそれほど感じられない。ただし、価格はハイビジョンに比べて当初20%ほど割高だった。

 フルHDが本格化し始めたのは昨年半ば頃からだ。ユーザーの反応を探りながらフルHDの投入を始めたメーカーは、立ち上がりの手応えを感じると、足並みを揃えてフルHDを需要拡大のキーワードに据えた。その結果、液晶テレビの商品構成はこの1年で激変した。売り上げの伸びが高い40─50型未満の液晶テレビの場合、昨年9月のフルHDの販売比率は49.7%だったが、今年の9月には一気に91.1%にまで拡大した。

 画質の優れたフルHDという、分かりやすいキーワードが、圧倒的なユーザーの支持を集めたともいえるが、視点を変えれば、それに乗じてメーカー側が比較的割安な通常のハイビジョンテレビを1年足らずで一掃してしまったという見方もできる。この年末商戦用の新製品に限れば、37型以上の液晶テレビはほぼすべてがフルHD対応で占められている。

 ハイビジョン元年と騒がれたのは2002年のことだった。しかし、わずか5年で中型以上のテレビでは通常のハイビジョン製品は淘汰されてしまったことになる。価格低下に歯止めのかからないパソコンと比較すると、恐るべきは国産家電メーカーの支配力ということに尽きるのかもしれない。
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