視点

ソフトウェア産業をもっと魅力的に

2007/10/08 16:41

週刊BCN 2007年10月08日vol.1206掲載

 IT産業が花形産業とみられていた時代はもう過去のものかもしれない。特にソフトウェア産業はその魅力が薄れつつあるようだ。

 ソフトウェアの開発現場で、新たな3Kが問題になっている。「きつい」「厳しい」「帰れない」がその語源のようだが、ほかにも「給料が安い」「つまらない仕事」「苦労する」などもあるかもしれない。それが事実なら3Kどころか多重Kである。

 この分野はもともと慢性的に人材が足りないのに、こんな悪いイメージが影響してか、最近はIT分野を専攻する学生が減ってきているという。このような状態が続けば、わが国のソフトウェア産業は衰退するだろう。

 ソフトウェア産業に優秀な人材を呼び込むためには、この多重Kを解消するとともに、ソフトウェア技術者の社会的地位の向上をはかり、産業をより魅力的なものにしなければならない。

 多重Kの原因の1つは、下請けが多いという産業構造にもある。下請けの階層が多くなるほど多重Kも深刻になるようだ。この構造改革には長期的な視点で取り組む必要がある。

 プロジェクト管理に問題があると、多重Kを誘発する可能性が高い。わが国ではプロジェクト管理の重要性があまり認識されておらず、その人材育成も手薄である。適切なプロジェクト管理は多重Kの緩和に効果があろう。

 仕事をしていて喜びを感じるのは、目標を達成できたという「達成感」と、仕事を通して自分が成長できたという「成長感」が得られたときだろう。

 だが、大規模ソフトウェアの細部の開発や、新しい知識と技術を吸収できないような開発では達成感や成長感は得にくい。そうなれば仕事はつまらなくなる。達成感と成長感の問題は、それを意識したプロジェクト管理である程度解決できるはずである。

 人材不足の解決には大学の努力も期待したい。大学の教養課程で行われるのは、がインターネットの使い方などユーザー教育が中心である。ソフトウェア開発は知的創作活動だから大学教育に相応しいのだが、それがほとんど行われていない。

 大学ではこの点をよく理解して、文系や理系を問わずソフトウェア開発の教育にもっと力を入れるべきである。そしてソフトウェア産業の魅力を十分に宣伝してほしい。そうすれば、ソフトウェア開発の面白さに魅せられ、この産業に関心をもつようになる学生がもっと増えるはずである。
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