IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手
<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>20.アーネスト・エフツー編(下)
2007/10/08 20:45
週刊BCN 2007年10月08日vol.1206掲載
顧客が“見える”システムに
「牛乳販売店」は全国に約1万店舗が存在する。この販売店を流通網として食品を卸売りするアーネスト・エフツーの鮎貝(あゆかい)秀興社長によると、「このうち約3割が牛乳以外の食品や雑貨など『2次商品』で売り上げをあげている」という。約400店と提携する同社には、全国に競合が数多く存在するのだ。単にチラシを配布してもらうだけでは、投資対効果が低いままで、事業拡大ができない。「牛乳販売店」の要望や顧客ニーズを捉えたうえで、「提案型の営業展開が必須」(鮎貝社長)である。例えば、ヤクルトでは、チラシ還元率(配布枚数に対する注文件数)は約0.5%という。これに対し、アーネスト・エフツーの還元率は、以前のシステム環境時はそれに満たず、非効率だった。
昨年9月、マグレックスから弥生の「会計」「販売管理」にシステムを入れ替えた。だが、担当ITコーディネータ(ITC)の石井和男氏(NPO法人千葉県ITコーディネータ事務局長)は、「弥生のソフト導入で業務プロセスは改善できたが、鮎貝社長が望む提案型の営業戦略を立てるには、機能が不足していた」という。そこで、旭硝子時代に硝子・建材の問屋向けシステムを開発した石井氏が、マイクロソフトの「Access」で、戦略立案に役立つ販売管理資料を作成できる独自ソフトを自前で開発した。
新システムは、得意先・商品カテゴリー別売り上げ推移や地域・商品カテゴリー別推移などのデータをとることができる。顧客が必要とする商品情報を調査して商品分類コードなどの統計コードも整備し、地域や顧客数など販売店に応じたチラシ作成や提案も可能になった。
弥生のソフト側では、売上高の8%を占めるチラシ作成・配布費などを圧縮するため、チラシの納品書・請求書発行を自動化。チラシ配布枚数と売上高の相関を明確化でき、「定性・定量データを基に、地域や顧客数、ニーズなどに応じ、手間や無駄を極力少なくして営業展開することができた」と鮎貝社長は喜ぶ。
3年間で完成した新システムでは、「全店舗をくまなく営業するのでなく、販売効率のよい店舗へ営業を集約でき、巡回する回数も増やせる」(鮎貝社長)と、IT効果を実感する。
同社の仮想サーバーで稼働する新システムは、完成までに弥生のソフト(5ライセンス)やパソコン5台、「Access」開発費などを含め、3年間に約200万円を投じた。現在、物理的な販売網に加え、ミドル層に向けた「ネットショップ」を石井氏と企画中。「石井さんのお陰で基礎固めができた。売上高3億円までいまの人員で耐えられる」(鮎貝社長)と、在庫管理などを徹底する計画だ。(谷畑良胤●取材/文)
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