視点

「→検索」広告から読み取るもの

2007/09/17 16:41

週刊BCN 2007年09月17日vol.1203掲載

 最近、目につくようになったのは、テレビコマーシャルや電車の中吊り広告の「〔○○○○〕→検索」という表現だ。Webサイトにヒットするキーワードを広告するというのは、これまでになかった手法ではなかろうか。

 いろいろな会社がこうした広告を採用しているのは、どこかの代理店が一斉に同じ企画を提案したからだろうか。

 流行で思い出すのは「ネオダマ」という言葉である。ネットワーク、オープンシステム、ダウンサイジング、マルチメディアの4つをくっつけた造語だ。1980年代の後半、これからのIT業界の潮流として、富士通の山本卓眞氏が初めて口にしたとされている。分かりやすいというので、一時期、IT業界の流行語になった。

 実際の創作者はオプティマムシステムズ(現オプティマ)の森田良民氏。富士通のソフト開発パートナー会で森田氏が行った講演を山本氏が聞いていて、「私にも使わせてもらいたい」と森田氏の快諾を得た。約20年が経って振り返ると、言いえて妙、正鵠を射ている。「ネオダマ」はITテクノロジーの変化だけでなく、メディアミックスをも意味していた。この20年は紙媒体と電波媒体の複合化ばかりでなく、インターネットとの融合が模索された期間だった。模索は現在も続いており、ことにWebサービスの登場が20世紀型メディアのあり方に決定的な変化を迫っている。

 「〔○○○○〕→検索」は、紙媒体、電波媒体がインターネットのWebサイトへの入り口になったことを示す。紙媒体には紙面の面積、電波媒体は放送時間の制約がある。そこで「詳しいことはコチラで」というわけだ。たしかに広告主にとって、リアルタイムに情報を追加・修正でき、ジャストインフォメーションを市場に提供できるメリットは大きい。

 情報提供におけるSCM(サプライチェーンマネジメント)であり、オンデマンド型のジャストインフォメーションと考えれば、「〔○○○○〕→検索」が受ける理由がよく分かる。ただ掲示される情報がリアルタイムに変更されるとすると、タイミングによってユーザーが得る情報が異なることになり、無用の誤解や混乱を拡大しかねない懸念もある。

 本紙BCNもWebサイトの充実を進め、Webサービス時代への対応を強化しているが、最後にたどりつくのは「健全な報道のあり方」だ。地道な取材に基づき、分かりやすく編集する、プロフェッショナルの視点が試されている。
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