IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>17.アンスコ編(上)

2007/09/17 20:45

週刊BCN 2007年09月17日vol.1203掲載

IT経営改革プロジェクト始動

 精密ネジメーカーのアンスコ(安藤秀文社長、名古屋市北区)は2010年、業界トップ企業に成長する野心的な経営目標を掲げる。これまでトップグループには入っていたものの、頭ひとつ抜け出せないでいた。しかし、大手商社・丸紅の出身で、改革意欲が旺盛な安藤秀文氏が2年前に経営トップに就いたことで状況は一変。成長戦略を明確に指し示し、全社員を巻き込んだ経営革新がスタートした。

 安藤氏が社長に就いて、まず感じたのが「数字が見えない」こと。生産や販売管理などの基幹業務は20年前に設計開発されたオフコンをベースとしたもので、財務会計や人事給与は一部に市販の表計算ソフトを使うなど、リアルタイム性に欠けるシステムだった。

 財務会計については緊急を要する課題であったため、社長就任の年にセイコーエプソンの財務会計パッケージソフト「財務応援」を導入。財務スタッフによる従来の属人的な管理手法を改め、経営陣がいつでも会計データをリアルタイムに参照できるようにした。

 とはいえ、生産や販売に携わる多くの社員が使う情報システムを近代化しなければ、本当の意味でのリアルタイム性、正確な数字の把握は実現できない。そこで立ち上げたのが全社的な取り組みである「IT経営改革プロジェクト」である。役員や主要幹部が中心メンバーとなり、2006年7月に旗揚げした。

 プロジェクトを成功させるには意識改革から始める必要があった。長年オフコンを使ってきた多くの社員にとって“ITを活用した経営改革”といってもピンとこない。勘がいい社員はすぐに気づいても、ベテラン社員のなかにはITと改革が具体的なイメージとして結びつかない場面もみられたからだ。社長自身も頭では分かっていても、こうした人間系の改革をどう進めていいのか迷っていたところにITコーディネータとの出会いがあった。

 企業のIT活用型経営革新を支援するITコーディネータは、さっそくコンサルティングを開始。聞き取りを進めていくなかで、さまざまな課題が浮き彫りになってきた。アンスコは創業1939年の伝統ある会社だけに、昔ながらの慣習が色濃く残っている。たとえば責任と権限が不明確であったり、情報の周知・共有が不徹底、納期回答が担当者によって異なるなどの問題だ。

 コンサルティング業務に参加したITコーディネータで山田ITコンサルティングオフィス・山田和久代表は、「IT化をする以前に、こうした企業風土の改革が先決である」と判断し、「経営幹部マネジメント研修」を役員・幹部社員に受講してもらうことにした。(つづく)
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