視点
ユーザー不在の量販店戦争
2007/08/13 16:41
週刊BCN 2007年08月13日vol.1199掲載
量販店が価格競争に走れば、低価格品を広く浅く大量に売ることで収益を確保するしかなくなる。当然、量販店はメーカーに卸価格を値切る。こうしたなかで量販店は収益を上げるため、人員削減やサービス抑制で対処する「負のスパイラル」に陥ると考えるからだ。
昨年夏、ドイツの大手量販店を訪れた。日本ほどではないが店頭は賑わっており、収益も順調に伸びているという。しかし、メーカー担当者に聞くと、「今は、街の電器店に注目している」と小声で言う。
ドイツの電器店(いわゆるパパママショップ)は、組合を結成し、製品の卸や物流網の構築で共同戦線を張り、メーカーから大量の製品を安価に仕入れ販売している。デジタル家電は、高機能化して一般家庭が利用するまでに、設定や他の家電品との接続、ネットワーク設定、利用方法を含め、身近な電器店に教えを請うことが増えている。それゆえに、多少高くてもサービスを受けられる利便性から、身近な電器店が重宝がられているのだ。
松下電器産業のプラズマテレビは、国内にある系列電器店「ナショナルショップ」などの販売比率が、全体の4割を占めるということからも、一般家庭がサービスを欲していることが分かる。
ヤマダ電機が都市型店舗に進出したのは、「まちづくり三法の改正」で郊外店舗を出店しづらくなったことがまず挙げられる。「LABI」は向こう3年間で9店舗ほど出店する計画だ。「都市型店と郊外店の中間」という同社の大阪店は、利益率が非常に高く、こんなことも駅前出店に拍車をかけているのだろう。
ヤマダ電機の駅前出店で、第2・第3の電気街「アキバ」をつくることにはなる。しかし、サービスを売りにした秋葉原にあるラオックスの「ザ・コンピュータ館」が閉店するように、消耗戦を経て、今後重要になるサービス力を失うことにもなりかねないと危惧している。
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