次世代Key Projectの曙光

<次世代Key Projectの曙光>19.日立情報システムズ(上)

2007/08/13 20:40

週刊BCN 2007年08月13日vol.1199掲載

金属製のRFID開発

 日立情報システムズ(原巖社長)は2003年から「Chipin/Innovation(チップイン/イノベーション)」というRFIDシステムのソリューションを展開している。ある営業担当者が「強度が高く、屋外などの苛酷な環境でも耐えられるRFIDにニーズがある」と着目。そこから金属製タグの開発をはじめ、06年6月から、「メタルタグソリューションChipin/Metal(チップイン/メタル)」の提供を開始した。
◇      ◇


「Chipin/Innovation」というRFIDのソリューションを03年から展開している日立情報システム。同社ではそれまで、丈夫で破損しにくい樹脂で加工したタグや、金属に取り付けることができる「薄型金属対応タグ」などの製品を扱っていた。

 しかし屋外で使用した場合に、紫外線や風雨など、さまざまなプレッシャーを受けてタグが壊れたり、接着剤で貼り付けた場合には劣化し、はがれてしまったりする可能性があり、引き合いはあっても、なかなか成約にまでこぎ着けることができなかった。

 そんななか、一人の営業担当者が、過酷な環境で使用しても壊れず、しっかりと留めつけることができるタグなら商談が進めやすいと、金属を使ったタグを作ることを持ちかけてきた。しかし、「RFIDの場合、金属が近くにあると、通信できなくなることから、作るのは無理だと考えて断った」とビジネスソリューション本部RFID事業推進部の山方茂部長は経緯を語る。

 その後も「金属で作った頑丈なタグなら絶対に売れる」とその営業担当者は主張し続けた。そして05年春頃、その熱意に動かされ、開発に着手することとなった。

 従来は、樹脂を使用し、タグを「覆う」という発想で、強度を高めていたが、「コロンブスの卵で、『覆う』のではなく金属部分を電波を受けるための『アンテナ』と考え、『アンテナを丈夫にする』という発想に行き着いた」のだという。

 日立情報システムズはSIerであるため「ソフトウェアはコピーすれば簡単に量産できるが、ハードウェアに対する量産化技術を社内に持っていなかった」と山方茂部長は振り返る。

 05年の春、開発を思い立ってから程なく、グループ会社で、ICタグ生産など半導体製造で世界的に有名な青森にあるルネサスハイコンポーネンツに開発・製造の協力を仰いだ。

 そして月1、2回は同社を訪れ、タグの量産化について模索していた。(鍋島蓉子●取材/文)
  • 1