IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>11.ふじカプリス編(上)

2007/07/30 16:18

週刊BCN 2007年07月30日vol.1197掲載

ITで「顧客本位」を実現

 東京・千駄ヶ谷に小さい店ながらも確実にリピート顧客を増やし、順調に売り上げを伸ばしているエステサロン「ふじカプリス」がある。同店は、顧客データの分析や売り上げ管理が可能なシステムを3年前から導入。現在では「導入後と比べて売り上げが3倍程度に伸びた」と、奈良直美代表取締役は胸を張る。

 導入したシステムは、顧客のカルテをデータベース化することで効果的な情報提供が行える仕組みになっている。また、5分単位の予約管理が可能。予約管理は、ホームページとも連動しており、パソコンや携帯電話のユーザーは30分単位で空室状況を把握できる。こうした顧客本位のサービスを充実させることで、「顧客一人ひとりに合ったメニューの紹介やアドバイスなどをスタッフみんなで共有できるようになったほか、空室を埋めることにもつながった」。

 システムを構築したのは、ITコーディネータの平泉哲史氏。当時、ふじカプリスの奈良代表取締役は、閉店後の事務処理など本来の仕事以外の雑事に煩わされるスタッフの負担を軽減させたいと考えていた。「奈良社長の話を聞いてIT経営成熟度診断を行った結果、事務処理の軽減だけでなく、スタッフの負担軽減によって顧客へのサービスを一段と向上させたいという意思が伝わってきた。それならば、IT化で解決したいと考えた」と、平泉氏は振り返る。しかし、ふじカプリスに適したシステムを構築するには時間や手間、コストがかかる。そこで、「ベンダーには依頼せずに、(自分で)システムを開発してみよう」と、平泉氏は考えた。技術者として、直接的、間接的に40年以上の実務経験を生かし、システム開発にあたった。

 事務処理の軽減とサービスの向上を意識したシステム。電子化した顧客データをもとに、顧客が喜ぶサービスの提供を可能にするというわけだ。「まずは、顧客カルテのデータベース化を進めよう」(平泉氏)。これまで手書きだった顧客カルテを入力するのは、多少の時間がかかったそうだが「奈良社長をはじめ、すべてのスタッフのIT化への意欲が高かった。飲み込みも早かったため、システム導入後のデータ入力は大きな負担にならなかったのではないか」と、平泉氏はみている。逆に、スタッフから「『来店初日からの肌の経過を画像などで分析できるような機能も入れたい』といったエステサロンならではの要望も出てきた」という。平泉氏とふじカプリスの二人三脚で最適な機能を考えた末、現段階では複数の角度から顧客の姿を分析できるシステムに仕上がっている。システム価格は100万円以下と、かなりの破格の安さだ。「通常、数百万円はかかるところを、生産管理やPOSのノウハウを利用すれば何か月もかけずにできると見込んだ結果」と平泉氏は強調する。(佐相彰彦●取材/文)
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