IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>5.ビッグシェフ編(上)

2007/06/18 16:18

週刊BCN 2007年06月18日vol.1191掲載

溢れる取引伝票、どう処理する?

 厳選素材を使った新鮮さが売りの「生ドレッシング」などを製造・販売するビッグシェフ。チルド(冷蔵保存食品)ドレッシング販売では、国内実績1位を誇る。成長を続ける同社だが、数年前まで本社や工場に、取引先とやり取りする伝票や帳票の“紙”が溢れていた。2代目の藤咲秀知社長ら幹部は、「この状態を何とかしたかった」と異口同音に述懐する。

 同社の製品は現在、生ドレッシング23種類、業務用の調理ソースなどが40種類。生ドレッシングはチルド製法で「賞味期限が60日」という新鮮さを武器に、キユーピーなど国内大手メーカーと対等に張り合う。「基本は『受注・生産』。作りたてを、より早く届ける」(藤咲社長)ことを信条としているため、受注して生産、梱包、納品に至るまでの迅速な業務フローが欠かせない。

 創業(1977年)した当時は、「2年程度、苦しい時期があった」(藤咲社長)ものの、その後は売上高を年率5%程度伸ばしてきた。いまや、大手のコンビニやスーパー、百貨店、飲食店などを取引先に抱えて順調に推移している。

 取引先が拡大するにつれ、それぞれに異なる専用伝票が増え続けた。ミロク情報サービスの販売管理ソフトウェア「販売大将」を入れていたが、「画一的な納品書や請求書の発行システムにすぎない」(萩原正男・取締役)ため、各取引先用の伝票に合致せず、結果としてFAX送信など重複した手書き業務を余儀なくされた。

 藤咲社長は社員の業務負荷を低減したいと、おぼろげには考えていた。5年前、そんな折りに大学の後輩であるITコーディネータ(ITC)の今野康一氏(NPO法人ITC横浜・理事長)から、連絡が入った。「国の制度を使ってITを活用しませんか?」。しかし、後輩からの提案とはいえ、藤咲社長にはすんなりとは受け入れにくかった事情がある。

 マイクロソフトの「Windows95」が華々しく登場した当時、IT化を検討したことがある。知人のIT業者に事務所と工場機能を一元化するシステムの見積もりを依頼。ところが、提示された初期投資額は約2500万円。「到底出せる金額ではない」(藤咲社長)と、IT化を断念した経緯がある。それだけに、再びこの水準の投資額を要求されるのであれば、心ならずも申し出を断ることになると懸念した。

 今野氏は、藤咲社長の胸の内を理解しつつ、内情を知ることが先決と考え、当時の受注・納品・梱包指示、生産指示、請求システムなど、業務フローを徹底的に調べ上げた。「とにかく、例外処理が多すぎる」。しかし、「IT活用で大幅に業務を低減できる」と藤咲社長を説得し、承諾を得た。

 それでも、IT化の初期投資額には気を遣う必要があった。そこで低価格でしかも「例外処理に、柔軟に対応できる」(今野氏)と、データベース構築ソフト「FileMaker」を使ってシステムを構築することにした。(谷畑良胤●取材/文)
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