次世代Key Projectの曙光

<次世代Key Projectの曙光>11.日立製作所(上)

2007/06/18 20:40

週刊BCN 2007年06月18日vol.1191掲載

ワイヤレスとタグがキーワード

 日立製作所のワイヤレスインフォ ベンチャーカンパニーは、カンパニー長&CEOの木下泰三氏が中心となり、2004年に立ち上げた社内ベンチャーだ。「ワイヤレス」と「アクティブタグ」に焦点をあて、無線LANで位置を検知する「AirLocationⅡ」など、3事業を展開している。
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 木下氏は入社当時、日立の事業基盤を支える中央研究所で光通信を研究していた。「当時、将来的にはデータ量が何百メガ、何ギガビットなるという予測があった」なかで、大容量通信は光ファイバーでしか実現できなかった。実際に「光で何を送るか」となった時、ハイビジョンデジタル映像に行き着いた。ここから光ファイバー通信自体ではなく、マルチメディア寄りのデジタル画像伝送の研究にシフトした。画像や音声などのデジタルマルチメディア研究で、『部長代理』の役職にあたる『ユニットリーダー』を務めた後、97年から2年間は本社の社長直下の新事業推進本部に所属し、電子ブック研究に携わった。その後再び中央研究所に戻り、マルチメディアを研究する部門の部長、所長に次ぐ企画室長へと昇進した。「研究所は約1000人いるが、半導体、コンピュータ、原子力発電など技術すべてに目を通すことが大変だった」ようだ。

 03年、今度は庄山悦彦社長(当時)が直に組織した『コーポレートシニアスタッフ』に任命された。「新事業推進室と似ているが社長を直接支えるスタッフであることが異なる点」だ。ミッションは「新事業を起こすこと」。さまざまな部署から移ってきたスタッフは各々1-2年ほどの限られた期間に新事業を検討する。木下氏は研究所で企画室にいた経験から、新事業の種には困らなかった。あとは「どれが事業になるか、どれが日立向きか」という視点で絞り込んだ。

 キーワードは「位置情報」と「ワイヤレス」。「無線LANを使った付加価値にニーズがあると予測した」。さらにRFIDのなかでも特に「アクティブタグ」がSuicaに代表される電池のない「パッシブタグ」を駆逐し伸長すると考えた。電池を持ち、飛距離もあるアクティブタグは利用シーンも格段に広がる。「タグと、無線LANの掛け算の先に何かがある」。アプリケーションを考えるなかで注目したのが「位置情報」だ。特に工場、倉庫、駅など「インドア」使用でニーズがあると考えた。03年、経営会議で新事業を提案し、審査を通過。04年、ワイヤレスインフォ ベンチャーカンパニーを設立した。(鍋島蓉子●取材/文)
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