未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業 

<未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業>119.アプレッソ

2007/03/26 20:44

週刊BCN 2007年03月26日vol.1180掲載

納入先500社を超すデータ連携ソフト

 アプレッソ(長谷川礼司社長)のデータ連携ツール「DataSpider(データスパイダー)」が好調だ。導入社数はすでに500社を超えた。2004年以降、毎年100社以上の導入実績がある。「データスパイダーの認知度が高まったうえ、SOA(サービス指向アーキテクチャ)に近いアプローチの製品だけに、SOAやWebサービスなどの浸透によって、データ連携市場が拡大してきた」と、小野和俊副社長はその要因を分析する。 「業務の自動化から、データハブまでヘビーな使い方ができる」(東方亮・企画本部本部長)のが強みで、業種別販売先では情報・通信業界が最も多い。

 データスパイダーはユーザビリティに力を入れ、ノンコーディングで、短時間で構築できるのが特徴だ。処理後は、フローチャートにし可視化する。見た目が分かりやすいものは、処理速度が遅くなる傾向があるという。だが「処理内容をJavaで生成しコンパイルするため、高速処理できる。パフォーマンスでも優位性もある」(小野副社長)。

 同製品は小野副社長が学生の頃の発想が元となっている。小野副社長は野村総合研究所に勤めていた。当時キーワードを入れると新聞記事や白書など、さまざまなデータが検索できるデータベースがあったが、ファイルフォーマットの違いから、それぞれアクセス方法などが異なることに不便を感じた。「ファイルフォーマットの違いを感じさせずに自動でデータを連携できたらいい」と考えたのが発端だ。

 卒業後はサン・マイクロシステムズに入社し、シリコンバレーで開発プロジェクトに参加した。「納期が迫っているにもかかわらず行き詰っていた」とき、マネージャーが突然メンバーをスキーに連れて行った。「プロジェクトから離れてみると、本筋以外の余計な部分にまで手を出していることに気がついた」。この気分転換で、プロジェクトは見事に成功したという。このとき「米国のダイナミズム」を感じた。

 アメリカが進んでいるようにも思えるITだが、日本にも強いところがある。「日本のソフトはバグが少なく安定性に優れている」点だ。だが、パッケージ製品があまりない。このアメリカの持つダイナミズムと、日本の高い品質を併せ持った製品を提供したいと考えたのも、データスパイダー開発の一つの要因となった。

 今後は09年6月末までに10億円の売り上げを目指す。「日本では手組みが多いため、こういったパッケージを使う文化がない。まずは出荷本数を伸ばして、デファクトに近いところに持っていく」ことを狙う。[おわり](鍋島蓉子)
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