視点

著作権集中管理システムへの期待と懸念

2007/02/12 16:41

週刊BCN 2007年02月12日vol.1174掲載

 すでにある作品を雑誌や書籍、ウェブページ等に収録したいと思った時、まず確認を求められるのが、著作権の状況だ。保護期間は作者の死後50年まで。没年が確認できて、著作権切れとわかれば、誰に断るまでもなく使える。ただ「著作権台帳」やWebOPAC等で確認できないと、厄介だ。没年確認には、情報源の決定版がない。

 死後50年を経ていないケースでは、著作権者の許諾が必要になる。作者が存命なら、連絡がつく可能性は高い。問題は、没後で死後50年を経ていないケース。頼りになるのはやはり「著作権台帳」だが、盤石とは言い難い。情報が得られなければ、収録は諦めざるを得なくなる。著作物の利用を促すうえで、没年と著作権継承者に関する、切り札と頼める情報システムを整備する意義は、きわめて大きい。

 日本音楽著作権協会(JASRAC)など、17の権利者団体が結成した「著作権問題を考える創作者団体協議会」は、1月25日、後者の課題に応えてくれそうな提案を行った。各団体が、権利者データベースを整備し、ポータルサイトから検索できる集中管理システムの構築を目指す。著作権者が登録していれば、作品名などで検索して利用料や利用条件を確認でき、権利者団体を通じて、利用料も支払えるようにするという。

 利用料が発生する領域をカバーしようとするこの提案に加え、「これは権利が切れていて、自由に使える」と明示するシステムが、願わくば文化庁によって整備されれば、著作物の利用を促す、強力な二本柱となる。一方を担おうとする同協議会の構想は、その意味で評価できる。

 ただ、一点気になるのが、同協議会が先に文化庁に寄せた、保護期間を70年に延ばせとする要望との関連だ。著作権情報システムの重要性には、70年に延ばした場合でも、50年を維持しても、より短くすると夢想してみても、変わりがない。本来、期間の長短にかかわらず重要なシステムの整備を、「これを作れば、70年に延ばしても大丈夫」と結びつけて論じることがあれば、保護期間延長は、自分たちのシステムで囲い込める著作権管理ビジネスのパイを広げるための、私利私欲に根ざした要求との批判を招く。

 保護期間は保護期間。システム整備はシステム整備。延長如何を問わず、システムの整備は必要と、はっきり認識しておいたほうがいい。
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