視点

「情報」教育に業界一体の支援を

2007/01/01 16:41

週刊BCN 2007年01月01日vol.1168掲載

 明けましておめでとうございます。  さて、本号の1面でもご覧の通り、今年のIT産業は投資の拡大を受けて晴れ間の続く好況が期待できそうだ。

 こうした好況下にあって、懸念されるのが人材不足の問題である。産業の担い手である次世代の技術者育成は、IT業界にとって死活問題にも等しい。しかし教育の実態は、残念ながら薄ら寒い限りだ。 昨年表面化した高校での必修科目の未履修問題では、「情報」で履修時間や単位が不足している学校が続出した。教育現場がこのありさまでは、世界最高のIT国家などは単なる絵空事でしかない。

 隣国の中国では、全土にIT系の専門大学を展開し、2010年にはIT分野の技術者数を現在の6倍強の250万人に増やすという。それに比べて、日本のIT教育の惨状は目を覆わんばかりである。業界関係者のなかからは、「いずれ日本が中国の下請けになる」という自嘲気味のつぶやきさえ聞こえてくる。

 とはいえ、こうした問題を批判して、対岸からいくら石を投げても状況は容易に変わりそうにない。むしろIT産業が一体となって、情報教育への支援を模索する必要があるのではないだろうか。「情報」の授業がなおざりにされている背景には専門教員の不足がある。とすればIT企業で実際にソフト開発やインストラクター業務に携わった実務経験者を、学校に送り込むことは不可能なのだろうか。

 例えば、神奈川県の厚木市では、昨年度から英語と数学の授業を支援する補助教員の派遣事業を開始した。IT企業や機械メーカーで英語や数学の実務経験がある社会人41名を採用し、市内の中学校で年間175日の支援授業を行うという。市がこうした補助教員の派遣を事業として行うのは全国でも初めてだ。あるいは旅行代理店のJTB地球倶楽部では、06年6月から日本在住の外国人を英語の補助教員として教育機関に派遣する事業を開始した。

 こうした補助教員の登用は、市や県の教育委員会が管轄するだけに、地域によって温度差がありそうだ。しかし、家庭科や理科の教員を15時間程度の研修で「情報」担当教師に仕立て上げるのであれば、はるかに優れた人材がIT業界には揃っている。現役が難しければ、団塊世代のOBを組織化する方法もある。人材の育成に対して業界が一体となれば、教育現場の門戸を開くことはそれほど難しくはないはずだ。
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