視点

ソフト産業に海外展開のチャンス

2006/12/18 16:41

週刊BCN 2006年12月18日vol.1167掲載

 景気拡大を受けて、守りの経営から攻めの経営に主眼をおいた新しい事業モデルが増えてきた。とくに、製造業を中心に、国内だけでなく海外の生産・販売拠点を網羅したシステム構築のニーズが急速に拡大している。こうした動きは、国内のシステム構築を中心に手がけてきたソフトベンダーにも、新しい展開を迫るものといえるだろう。

 日本の製造業は、情報システムをフルに活用することで、分、秒単位の生産性向上を実現してきた。しかし製造拠点が海外に拡大するにつれて、海外も含めた物流や生産の効率化をはからなければ、これまでの努力も吹き飛びかねないという懸念が高まっている。

 ソフトベンダーにとって、こうした状況は、グローバルなビジネス展開へと脱皮するチャンスを意味している。重要なのは、現地のソフトベンダーとの緊密な連携である。

 しかし、海外の日系企業向けのシステムとなれば、言語の問題に限らず現地の税法や会計基準、取引慣習などの知識が不可欠となる。そのためには、現地の人びとにも、国内と同様の品質管理意識や開発スキルを備えてもらうための教育が、今まで以上に必要になるだろう。

 逆に、こうした教育、研修体制が整えば、互いの得意領域を生かしたパートナーシップによって、海外拠点の経営内容にまで踏み込んだシステム提案やコンサルティング事業にまでビジネスを広げることも不可能ではない。

 これまでSIベンダーは、国や文化、言語の違いが参入障壁となって、外国企業が立ち入れないサイト主義的な考えにとらわれがちだった。しかし、海外の日系企業に導入したシステムが、現地の従業員の人たちにも使いやすいと認められれば、取引関係のある現地企業に導入できるチャンスは十分にある。

 あるいは導入先の日本企業と協業しながら、特定の業界、業種向けのシステムを拡販していくことも夢ではなかろう。日本のプラント産業は、設備装置から運用まで提供できる総合力で世界の市場を席巻した。ソフト産業においても、マネジメントシステムから、日本の強みである製造業にかかわる自動化、制御系システムなどを一体にしたシステム提案ができれば、欧米のソフト企業には追随できない独自のビジネスを展開できる可能性が高い。ユーザー企業が海外に事業の足場を広げようとする今こそ、ソフト産業がグローバルに躍進できる絶好の機会といえるだろう。
  • 1