未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業 

<未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業>105.宙テクノロジー

2006/12/11 20:44

週刊BCN 2006年12月11日vol.1166掲載

3D地図で写実的な街をつくる

 宙(そら)テクノロジー(大久保貴之社長)は、3D地図関連のソフト開発やサービスを手がけるCSAJ(コンピュータソフトウェア協会)の会員企業だ。設立前、大手測量会社に勤務しながら、CG(コンピュータ・グラフィックス)の専門学校で技術を習得。この頃、立体地図とCGを結びつける手法を考え出し、会社を辞め個人事業主として仕事を始めた。2003年3月半ばに起きたイラク戦争中、ある会社を通し民放テレビ局から「立体のバグダッドをつくれるか」との問い合わせを受けた。写真をもとに3次元地図をつくったところ、「これまで精密にバグダッドを再現したモノはなかったので大変喜ばれた」。これが転機となり案件が増え、同年4月に起業した。

 通常の3次元地図は、2次元地図と標高データで作成するため、立体にすると建物の忠実な再現が難しい。しかし、宙テクノロジーの3次元地図「宙マップ」は、航空写真2枚をもとに屋上の凹凸など、建物形状を再現する。これに、CGで制作した「テクスチャー」をはると、さらに写実的な街並みが完成する。

 最近は、各都市をあらかじめ作成しておく、データライブラリーも始めた。テレビ局の「3次元地図内を動き回れるソフトはないか」とのニーズから3Dビューアシステム「宙ユートピア」も開発。最初はテレビ局や官公庁の引き合いが多かったが、今は売り上げの6-7割が不動産関係だ。

 現在は「宙マップ」と「宙ユートピア」の2本柱をもとに不動産向けソフトなどを販売している。「宙眺望システム」は高層マンションの各部屋の目線位置を割り出し、各部屋から見える建物の突起物を再現し、リアルに近い眺望を提供するのが特徴。「室内VR」は室内映像や、室内から見える景色を忠実に映し出す。3次元地図を生成して用済みになった写真を使いネット配信で「グーグルマップ」のように自在に地図を動かせる2次元の高速配信ビューアシステムもつくった。また、3次元地図から離れ、「物件までのルート映像がほしいという要望から、360度映し出せるカメラを開発した」。前後左右の景色を確認できる画角の大きな高画質ルート映像は、一番のヒット商品という。粉末積層カラー3D造型装置で、模型を全自動作成するジオラマ制作も始めた。

 今後はコンテンツでの強みを発揮し、ASPサービスにも注力する。「バーチャルな街で、アバターを通して人と接する場や建物をクリックし、情報を引き出せるインターフェースとして提供したい」。

 3年後に売上高3億5000万円の達成を目指している。(鍋島蓉子)
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