視点
SaaSの登場が意味するものは
2006/12/04 16:41
週刊BCN 2006年12月04日vol.1165掲載
利用料金はアメリカの場合、月額100ドル程度で、基本的なアプリケーションを利用できる。1999年にサービスを開始した米セールスフォース・ドットコムが、現在では導入企業約2万5000社、ユーザー数50万人に達するなど急速に普及が進んでいる。
日本では個別のカスタマイズが求められるだけに、関連企業はこの動きを静観する風潮が強かった。が、ここにきて局面が大きく動き始めた。まず、ソフトバンクBBがセールスフォース・ドットコムと提携し、同社のCRMサービスの代理販売に着手した。取引先のSIerが開発したソフトをCRMに連携させ、既存の販売ルートでSaaSの利用契約を販売する。ついで自前のソフトで中小企業に2万社近い顧客をもつミロク情報サービスが、米国のネットスイートと資本・業務提携を発表した。
両社にとってSaaSは、既存のパッケージ、SI事業と競合するサービスである。しかも低額の月額料金制は、ソフトの価格体系を崩壊させかねない。にもかかわらず、あえて提携を選択したのは、オンデマンドサービスが確実にソフトビジネスの主流に食い込んでくると判断したためだ。事実、ミロク情報サービスでは、今回の提携がネットスイートによるM&Aや、既存顧客の浸食を回避するための防衛的な資本提携であることを認めている。
SaaSの登場が業界にもたらす影響は複雑だ。積極的にとらえれば、これまで地方市場やユーザー企業などで限定的に活用されてきたソフト資産の流動性が高まる。個別開発ソフトの再利用が容易になり、低価格化の恩恵で中小事業所などの開拓が期待できる。
一方では、低価格化による淘汰と、アプリケーションの取り込みを狙ったM&Aによって、業界の寡占化が進むことも否定できない。
多様化か寡占化か。すう勢が決まるには少なくとも3年程度の期間はかかるだろう。その猶予期間をどう生かすか。ソフト産業全体が新たな対応を求められていることは間違いない。
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