ITジュニアの群像
第26回 熱闘!第27回高校生プロコン開催
2006/11/27 16:18
週刊BCN 2006年11月27日vol.1164掲載
進化したルールの下で火花散る
8校が決勝戦に進出
相手位置をキャッチし、素早く攻撃するゲーム
昨年の課題コンテスト「ターゲットサーチ」は、自陣からボールを投げて相手陣のターゲットに命中させる精度を競うもので、ボールを投げるたびに相手のターゲットにどれだけ近いのかというヒントが与えられ、このヒントを頼りにできるだけ少ない回数でターゲットに当てたチームが勝つというルールだった。
今回の「ターゲット2」は、1ターンごとに相手陣に「投げる」か自陣のターゲットを「逃がす」かを選択しながら、先に相手のターゲットに命中させるというルールに進化した。ターゲットは数直線上を右か左のどちらかに動かすことができ、ボールを当てようとする場合は90度の角度内で右か左のどちらかに投げることができる。
例えていうならば、直線道路上に大砲を構え合い、相手の大砲が前に出るか後ろに下がるかを予測しながら、適切な角度で弾を発射するという「陣地移動型砲撃戦」のようなゲームである。勝つためには相手の位置を素早く正確に把握しながら、その位置(いわば着弾点)めがけて適切な角度で弾を打ち上げる一方、相手に自陣の位置を悟らせないように、絶えず自陣の位置を動かすことが有効になる。相手の位置を上手に探るプログラムを組めた場合は、自陣を動かさずに射撃の精度がものをいうケースもあり得るわけだ。
ただし、これだけだと「解」が無限に生じてしまうため、対戦チームのノートPCが接続されるサーバーからは、ボールを投げた時に相手のターゲットからどのぐらいの位置に落ちたか6段階の位置情報が返されるようになっており、どちらかのボールが相手のターゲットに命中した後は、5分間の作戦タイムによってプログラムの差し替えができるルールになっている。
優勝は金沢北陵高校 勝負勘の鋭さが光る
この日の決勝戦に進出したのは東京工高(東京)、金沢北陵高(石川)、松山工高(愛媛)、郡山工高(福島)、松本工高(長野)、熊谷工高(埼玉)、名南工高(愛知)、水戸工高(茨城)の8校。決勝戦は金沢北陵対名南工高の戦いとなり、金沢が名南を2─0で下して、昨年に引き続き優勝の栄冠を手にした。3位以下は松本工高、熊谷工高、松山工高、東京工高、水戸工高、郡山工高の順だった。
優勝した金沢北陵は準決勝の1ターンで松本工高にリードを許したが、作戦タイムでプログラムを入れ替えて後半戦で2連続得点し松本工高を振り切った。同校の勝因はクラブ活動内の熾烈な戦いにある。1校から3チームエントリーできる全国予選段階ですでに1─2位を独占していた。出場者の大家英明さんと紙谷星吾さんはともに総合学科の1年生だ。指導教員の水野亮先生によると、プログラムを構成する能力はもちろん、相手によってゲームの組み立てを変える優れた勝負勘と臨機応変な対応が強みというチーム。実際、決勝戦を含む3試合のすべてにおいて、1ターンまでは相手の出方をうかがうプログラムで戦い、その後は相手の攻撃・防御のパターンを読み切って、その裏を衝くプログラムに切り替えて勝利を引き寄せた。なお、優勝校には東芝製ノートPCが、準優勝校には外付ストレージが贈呈された。
審査員として臨んだ日本工業大学情報工学科の丹羽次郎助教授は、「よく似たアルゴリズムが多かったなかで、独創性を生み出したチームが上位に進出した過程を眺め、私自身が学校での教材に使いたくなるヒントを得たほどだった。この成果をゲームに終わらせず、世の中の様々な問題の解決に応用する端緒としていただきたい」と講評を述べて各校の健闘を称えた。
見ても楽しいコンテストへ 杉山真人 プログラミングコンテスト実行委員会主査
「全国高校生プログラミングコンテスト」は、通商産業省(現・経済産業省)が1980年に情報化月間の一環として創設し、今年で27回を迎えた。歴史のある大会だが、昨年、コンテストは存続の危機に見舞われた。
だが、終了を惜しむ声が多く、工業高校を中心とした会員校からなる全国情報技術教育研究会が主催となり、県で独自にプログラミングコンテストを実施している埼玉県が事務局を引き受けて新しい形でスタートを切った。
これまでの応募作品に賞を与えるといった形式から、インターネットを活用したプログラミングコンテストとして生まれ変わって今年で2回目。「今回は対戦型競技を採用。予選を通過した8校が一堂に会し決勝戦を行うことで、以前より全国大会という名前にふさわしくなった」と杉山主査は話す。
単なるコンテストではなく、提示した課題に対してステージと呼ばれるヒントを順次出していくことで、参加校が勉強しながら進めることができるのが特徴。「課題やヒントはそのまま教材としても使えるのが、他のコンテストと違うところ」と強調する。
一方で、ヒントが出ることによってオリジナリティが失われがちだが、独創性を持って、各チーム特色のあるアルゴリズムで挑戦してほしいという。今後は、参加する生徒だけでなく、見学する人も楽しめるコンテストを目指していく。
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