SI新次元 経常利益率10%への道
<SI新次元 経常利益率10%への道>26.サイオステクノロジー(下)
2006/11/27 20:37
週刊BCN 2006年11月27日vol.1164掲載
赤字を出してでも狙うものとは
3年後は2割弱を海外で稼ぐ
サイオステクノロジーは、米ソフト開発ベンダーの買収関連費用の償却や人員増などのコストが膨らみ、今年度(2006年12月期)から来年度にかけて2期連続の赤字を見込む。黒字転換は08年度になる見通しで、昨年度の経常利益率6.3%を超える水準になるのは09年度以降だと予測している。一時的に赤字を出してでも狙うものとは何か。主力のLinuxのサービスサポートビジネスは売上高の8割近くを占める。国内トップクラスのシェアを持ち、これまでの成長を支えてきた優良事業である。しかしこの分野の国内市場規模は05年が約100億円、2年後の08年は約200億円と推計され、仮に08年度に国内で半分のシェアを獲ったとしても同事業の売上高は100億円である。
「さらに上を目指す」(喜多伸夫社長)ための足場としては市場規模が小さすぎる。
Linuxのようなオープンソースソフト(OSS)は基本的にソフトウェアライセンスの販売ビジネスが成り立たない。導入や運用保守にかかわるサービスサポートで収入を得るのが一般的だ。OSSの市場が急成長しているとはいえ、ライセンス販売を伴わないだけに市場規模は既存のパッケージソフトビジネスほど大きくない。半面、ユーザー企業にとっては安価にソフトウェアを活用できるところにOSSのメリットがある。
同社の強みはOSSやJava関連の技術力であるが、案件ごとに個別に開発するスタイルでは売上規模で10倍もあるような大手SIerに体力で及ばない。そこでサイオステクノロジーが選択した道はLinux分野に強いパッケージソフトを原動力としてグローバル展開を推進する戦略だ。「個別開発のスタイルで海外に出るのは難しい。ならばLinuxやJavaに強いパッケージソフトを開発して世界を目指す」と構想を語る。
今年6月、新たにグループに迎え入れた米ソフト開発会社「スティルアイテクノロジー」はLinuxのクラスタリングソフトに強い。今後は開発能力を高めて自社パッケージソフトの品揃えを増やしていく。OSSやJavaの高い技術を有し、自社パッケージソフトのライセンスビジネスで海外に出ようというものだ。09年度の連結売上高見通し89億円のうち2割弱を海外で売り上げる計画を立てる。
といって、SIの魅力が乏しくなったわけではない。「成長著しいグーグルを支える情報システムはOSSと個別開発が主体だといわれている。ライセンス費用がないOSSと個別開発を組み合わせる手法が次世代のソフト開発の理想的な姿であるならば、当社のビジネスモデルはまさに合致したものだ」と、OSSをベースとしたSIは有望だとみる。
OSS、Java領域の独自パッケージソフトでグローバル展開の基盤をつくり、かつSIビジネスも織りまぜていくことで事業拡大の突破口を見いだす考えだ。(安藤章司●取材/文)

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