SI新次元 経常利益率10%への道

<SI新次元 経常利益率10%への道>22.ジャステック(下)

2006/10/30 20:37

週刊BCN 2006年10月30日vol.1160掲載

「一分野一主義」を提唱

ソフト会社買収で世界進出も

 ジャステック(神山茂社長)は「一分野一社主義」を掲げる。今年度(2006年11月期)段階で同社が元請けで受託ソフトを開発したユーザー企業数は57社となる見通し。東京海上日動や日本航空など、各業界で資本力・業績などが1-5位の中堅・大企業で占められている。業界トップクラスの大企業は、同業他社と激烈な競争をしている。こうした企業は「ITシステムに独自の経営戦略を反映させ、世界的に競争している」(柴山泰生・常務取締役兼常務執行役員総務経理部長)。各企業の「競争力の源泉」部分を高い技術力で実現する同社への期待は大きくなっているという。

 昨年度の連結売上高は115億5900万円、経常利益が17億9400万円(経常利益率15.5%)。フランスのソフト会社「LTUテクノロジーズS.A.S.(LTU)」の買収費用があり、例年に比べ利益率は低下した。

 今年度は、同社で極めて異例となる大型案件での「不採算」が発生し、増収減益になる見込み。今年10月には経常利益率を修正し、12.2%(単体では15.4%)としたが、影響を最小限に抑えることに成功した。

 「不採算案件」をほとんど出さない理由としては「そもそも『赤字受注』がない」からだと柴山常務はいう。今回の「不採算」については、「Java開発で規模感にミスが生じた。設計段階の詰めの問題」と、改めて気を引き締める。企業側の要望が多様になり、ベンダー側との間で食い違いが生じるケースが多発し、「不採算案件」が国内で大量発生している。業務ノウハウを熟知する同社ですら、こうしたリスクが発生するのだ。

 「開発過程で『手戻り』があることは分かっている。それを、生産管理体制のなかで最小限に抑え込む」。開発の不具合を防止するため、多くのソフト会社は「人海戦術」で対応する。これに対し同社は、独自のソフト生産管理システム「ACTUM(アクタム)」で、リスクを解消する努力を積み上げている。

 同社の案件は、ほとんどが「元請け」「一括受注」だ。もちろん、大規模案件であり、外注の協力会社に開発の一部を移管している。現在の外注比率は約40%。最近、受託ソフト開発で外注トラブルを散見するが、同社は「『丸投げ』は一切せず、最終的な責任は当社が負う」という方針のもとに、外注先を管理する「購買部」を設け、一元的に管理・発注をしている。

 昨年度はLTUを買収し、同社の画像検索/検出ソフトで欧米へ進出した。2010年11月期には、国内200億円、海外50億円の売り上げ規模に拡大することを視野に入れている。(谷畑良胤●取材/文)
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