ITジュニアの群像
第21回 熱闘!第17回高専プロコン開催
2006/10/23 16:18
週刊BCN 2006年10月23日vol.1159掲載
全62校が技術と知恵を競う
海外含め100チーム余が熱い戦い
悪天候で交通機関は寸断 トラブル乗り越えて集結
17回目を迎えた今回の大会は、62校の高専全校が参加したこと、ハノイ工科大学、モンゴル国立大学、大連東軟情報技術職業学院の海外勢による課題部門への初参加が実現したこと(海外チームはオープン参加)など、例年にもまして盛況となった。
天候は前日からあいにくの荒れ模様。関東から東北にかけて、秋雨前線の通過に伴う台風並みの暴風雨となり、会場に向かう主要ルートのJR常磐線が寸断された。
八戸高専、宮城高専、仙台電波高専などは列車や振り替えバスに二十数時間も閉じこめられるという緊急事態も。立ち往生した駅舎でノートPCを充電したり、電車内のコンセントから電源を引っぱったりと、懸命に準備を進めながら、高専98チームがなんとか会場の茨城高専に到着した。
課題部門は長野高専に 自由部門は鈴鹿高専に栄冠
大会初日は課題・自由両部門のプレゼンテーション審査が行われ、競技部門は予行演習を経て夕方から本選(1回戦と敗者復活戦)に入った。プレゼン審査では予定の発表時間までに到着できないチームの順番を繰り下げる措置がとられたものの、とりたてて混乱はなく、遅れて到着した学生たちも長旅の疲れをものともせず堂に入ったプレゼンを展開した。
2日目は、競技部門では2回戦から決勝まで順調に進んだ。課題・自由両部門の実機によるデモンストレーションやシステムの審査では、会場への到着遅延による最終の詰めができずに口惜しがるチームが見られた。だが、全体として映像あり、音楽あり、大道具仕立てありのバラエティに富んだデモに会場は盛り上がり、審査員の鋭い突っ込みに汗だくでシステムを動かして答えるというように、プロコンならではの、ほほえましい光景があちこちで見られた。
課題部門のテーマは「子供心とコンピュータ」。ディスプレイ上にしゃぼん玉を作りだし、タッチパネルに触れると割れて音を出す高度な遊びを完成させた長野高専の「しゃぼん玉とばそ」が最優秀賞(文部科学大臣賞)に輝いた。課題部門2チームが予選を通過した長野高専は、さらに「発掘!恐竜大事典-友達を誘って、恐竜に会いにいこう-」を出展したチームも優秀賞を獲得し1─2位を独占する快挙を達成。また、鳥羽商船高専など4校に審査員特別賞が授与された。
自由部門では、ある単純な目的を達成するために無駄に複雑な機構を介在させて実現するという「ループ・ゴールドバーグマシン」をPCで擬似的に実現した鈴鹿高専に最優秀賞が、また、3Dを駆使した癒し系のイルカセラピー「$フィンファンタジー」を出展した詫間電波高専に優秀賞が授与され、さらに松江高専など4校が審査員特別賞を受賞した。
競技部門は久留米に軍配 海外勢も特別賞を獲得
競技部門は決勝戦(フル対戦のリーグ戦)に優勝経験校の久留米高専(プログラム名は「ツンヅケ」)、東京高専(同「きょーぎっくす」)の強豪と、新鋭石川高専(同「二進信宿清掃局」)が勝ち残り、僅差で試合を制した久留米高専が連覇を達成した。
なお、海外勢にも課題・競技両部門で各校に特別賞(大連東軟情報技術職業学院が課題部門「技術賞」・競技部門「国際交流賞」、ハノイ工科大学が課題部門「国際交流賞」・競技部門「技術賞」、モンゴル国立大学が課題部門「国際交流賞」)が授与された。
次号では大会の詳報を、また優秀な成績を収めた各校については追って順次掲載していく。
教員と学生が一体となって運営 角田幸紀 プロコン委員長
こんなに楽しみながら競う大会とは知らなかった──。開催校として委員長を務めた茨城高専の角田幸紀校長は、教員と学生が一体となった雰囲気に顔をほころばせる。
大会前日、本来なら100チーム余りのエントリー手続きが終わるはずだったが、悪天候で間に合ったのは、わずか十数チーム。大会当日になっても、なお十数チームが遅れるという波乱の幕開けとなった。
「それでもプロコン委員や運営スタッフとして参加した茨城高専の50人余りの学生たちの臨機応変な活躍によって、結果的にはすべてのチームがプログラムに参加できた」と、委員やスタッフの労をねぎらう。
「メンバー全員が大会を成功させようという熱意にあふれ、主体性と連帯感をもって積極的に行動してくれたことで、突発的な予定変更にも柔軟に対処できた」と話す。もし与えられた範囲の仕事しか手がけなければ、「ここまで機動的な対処はできなかった」と振り返る。
全国の62の高専がすべて参加し、また海外チームも過去最多の参加数となるなど、大会は大いに盛り上がった。開催校である茨城高専からの参加チームも課題部門と自由部門で敢闘賞を受賞するなど健闘。「開催校として恥ずかしくない活躍をしてくれた」と笑顔でエールを送る。
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