ITジュニアの群像
第16回 舞鶴工業高等専門学校
2006/09/18 20:45
週刊BCN 2006年09月18日vol.1154掲載
連続受賞をかけて背水の陣で臨む
2部門落選の悔しさをバネに
追い詰められると力を発揮する
第1回プロコンから昨年の第16回まで、連続して入賞の記録を残してきた舞鶴高専が、今年の第17回大会で「プロコン始まって以来、課題にも自由にも出場しない」(電気・制御システム工学専攻1年生の田中裕崇さん)こととなった。
今回は、プロコン出場メンバーの母体である「プログラマーズコミュニティー」から競技部門に出場するが、「第1回から第16回まで、部はほとんどの戦力を課題・自由部門に投入してきたため、競技部門については目立った成績を残した実績がない」と、実情を明かす。
しかし、発想を逆転させれば、今回は、競技部門に集中的に力を注げる。競技部門のメンバーは、電気工学科4年生の野崎泰宏さんをリーダーに、電子制御工学科2年生の土井敦史さんほかもう1人の2年生の計3名が出場する。リーダーの野崎さんは、「もちろん、目指すのは優勝」と宣言し、2年生2人を引っ張っている。
舞鶴高専がプロコンでの連続入賞記録を更新するためにも、今回競技部門に出場するメンバーたちが受けるプレッシャーは大きいが、「舞鶴高専は、追い詰められると力を発揮できる」(プログラマーズコミュニティー部長で電気工学科5年生の古田智成さん)そうだ。さらに、「野崎くん(リーダー)のレベルならば、ライバルを驚かせるだけの技術力がある」と、部長の古田さんは、後輩の実力に太鼓判を押す。
今回、リーダーとして出場する野崎さんは、昨年も競技部門に参加した。同校は昨年、課題部門で敢闘賞を受賞したものの、競技部門では1回戦で敗退してしまった。野崎さんは、「チームの意思疎通がうまく図れていなかったことや、スケジュール管理ができていなかった」ことを昨年の反省点として振り返る。今年は、この反省から、予定通りに着々と準備を進めている。
自分たちの強みと弱みを徹底的に分析して本選へ
現在、プログラマーズコミュニティーの活動は、4月から10月までがプロコンの活動期間、11月から翌年3月までをオフ期間としているが、昨年のオフ期間中からは、プロコンに向けて実力を強化することを目的に「部内プロコン」を開始した。昨年度に部長を務めた田中さんは、「プロコンで大きな賞を狙うには、アイデアや技術力は不可欠だが、さらにプレゼン能力も強化しなければならない」と指摘。日ごろの積み重ねが重要になると強調する。
田中さんによると、「特に、弓削商船(弓削商船高等専門学校)のプレゼンは毎年すごい」のだそうだ。そのため、「弓削商船を徹底的に研究して、自分たちのアピール方法を模索した」など、部員たちはライバルの研究に余念がない。さらに、毎回、自分たちの発表を振り返り、受賞要因を分析している。これらの取り組みも、16回連続受賞を達成できた要因ともいえる。
しかし、日ごろから努力を積み重ねてプロコンに挑んでいるプログラマーズコミュニティーの部員たちが、今回、自由部門・課題部門ともに本選に出場できないことの屈辱感は大きい。「これまで、自由や課題は、高学年の4-5年生がメインだったが、今回は、低学年を中心としたメンバーでチャレンジした」(部長の古田さん)ことから、経験不足が足を引っ張ってしまったのかもしれない。
プログラマーズコミュニティー顧問の三輪浩・建設システム工学科助教授は、「今回は、これまでの実績に甘えていた部分もあり、こんなもんでいけるだろうと過信してしまったのではないか」と分析する。連続受賞記録を守るためにも、何としてでも受賞しなければならない。
三輪助教授は、プロコンを通じて、「システムは、自分以外の人が使うものであることを常に考えて作ることを理解してもらいたい」と、共同でものを作る意味を学んでほしいと考えている。特にプログラマーズコミュニティーのメンバーは、「そこそこプログラムができるため、もともと自信を持っている学生が多い。しかし、チームで何かを作り上げるためには、技術力に長けた人間ばかりを集めたからといって最高のものができるわけではない」と指摘する。チームの仕事を達成するには、それぞれが担当したものをつなぎ合わせ、さらに、全体が締め切りを守ることの努力が重要であることを伝えたいとしている。また、社会に出てからリーダーを務められるようになってほしいと望んでいる。
三輪助教授は、「社会に出ると、自分がいいと考えたことでも、他の人が評価するとは限らない。そんなとき、どうするか。そういう壁を乗り越えるためのステップとして、プロコンを含め、各種大会へのチャレンジが学生の成長を促す」と、確信している。
国際人たれ、良き友をもて 小野紘一校長
舞鶴高専は、物の道理と原理をしっかり身につけたうえで、国際性を備えた人材の教育に力を入れている。
小野紘一校長は、「若いうちから実力と体力をつけておくこと」と、指導している。さらに、「将来、自分がどんなことをしたいのかをよく考え、専門分野に限らず、多様化する世の中に対応できるようにいろいろなことを勉強することが重要」だと強調する。
京都大学名誉教授の肩書きをもつ小野校長は、昨年、舞鶴高専に就任した。国際性を備えた人材を育成するためにも、「学生たちに、英語の必要性を身をもって感じてもらいたい」と、従来は国内で行っていた研修旅行を海外の協定校の視察に切り替えることにした。また、TOEICテスト600点以上の獲得を推進。英語力をつけることで海外を見聞し、世界に友達をつくることの大切さ、また就職した企業でも英語力が重要であることを学生に伝えている。
小野校長はさらに、「大学を卒業して約40年が経ったが、同窓会のネットワークを大切にし、お互いに助け合っている」という自らの経験をもとに、社会に出ても学生時代の先輩、同期生、後輩などとの良好なネットワークは、お互いを助け合う大事な財産であると語る。
学生生活のなかで「生涯にわたる良い友を持つ」ことの大切さを教えている。
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